笑顔になる赤ちゃん絵本『わーらった』と 『にっこりにこにこ』(作・風木一人 絵・市原淳 講談社)

「絵描きさんはどう決まるんですか?」は、ぼくがよく受ける質問のひとつだ。
「編集者と相談して決める」が答えで、ぼく推薦の人になることもあれば編集者推薦の人になることもある。
『わーらった』と『にっこりにこにこ』のときは編集者のKさんが市原淳さんを強く推薦してくれ、ぼくも異存なかったためすぐに決まった。

赤ちゃん絵本「もいもい」市原淳

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昨年刊行の『もいもい』が大ヒットした市原淳さんだが、当時はまだ絵本の仕事は多くはなく、Kさんは、イラストレーターとして大人気の市原さんに、ぜひもっと絵本を作ってもらいたかったのだろう。

この2作はふたごのような赤ちゃん向け絵本で、どちらも「笑顔になる」がテーマである。
笑顔が嫌いな人はいない。にっこりされて不愉快になる人なんてひとりもいない。それは赤ちゃんも大人も同じで、赤ちゃんはおそらく生まれつき笑顔の気持ちよさを知っている。何も教わらなくても、笑顔や泣き顔や怒った顔の意味がわかる。なんて素晴らしいんだろう。こういうことにぼくは大変感動してしまう性質なので、笑顔の絵本を作ろうと思った。

絵本「わーらった」風木一人 市原淳 講談社

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『わーらった』は泣き顔から笑顔になる絵本。くつ、かばん、ぼうしが泣き顔で登場して、ページをめくるとぱっと明るい笑顔を見せてくれる。その理由はどこにも書いていないけれど、終わりまで読むと想像できるようになっている。
くつやかばんという身近なモノを擬人化したのは、赤ちゃんはモノとイキモノをあまり区別していないなあと感じたからだ。モノにも自分と同じような感情があると思っていて、特に身近なモノや好きなモノは親しい友達のように感じている。そういう、成長すると失ってしまう感覚がとてもいとおしいものに思えて、この絵本を制作した。
保育園の先生から「新学期、まだ園になじめず泣いてばかりの子にいつも読んであげます。読み終わるころには笑顔になります」と言ってもらったことがある。

絵本「にっこりにこにこ」風木一人 市原淳 講談社

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『にっこりにこにこ』は微妙な顔(?)から笑顔になる絵本。こちらはネコ、イヌ、ネズミとおなじみの顔ぶれで、しかし、微妙な顔というのは赤ちゃん絵本では珍しいかもしれない。
市原淳さんにどうお伝えしたのかはっきり覚えていないが、怒っているでも泣いているでもなく、不満げとか、つまらなそうとか、ややあいまい表情がほしかった。明快な表情と比べれば描くのが難しかったに違いないが、市原さんはさすがで、みごとに微妙な顔のネコやイヌを描いてくれた。
種明かしをすればこの微妙な顔はぼくである。生活に疲れ、何か面白いことないかなあと町を歩いている。怒りも悲しみもないが、かといってウキウキするようなこともない。
信号待ちをしていると隣にベビーカーの赤ちゃんがやってきて、ふと目が合う。ぷくぷくのほっぺと黒目がちなつぶらな瞳。思わず口元がゆるみ、にっこりしてしまう。
赤ちゃんを見るとわけもなくにっこりしてしまうなあ、という経験からこの絵本が生まれた。微妙な顔のネコ、イヌ、ネズミたちも、もちろん、ページをめくるとにっこり笑顔を見せてくれる。
笑顔は笑顔を呼ぶし、不機嫌は不機嫌を呼ぶ。どうせリレーするならよいリレーをしたいものである。

※刊行の2009年に、くもんの絵本サイト「ミーテ」で受けたインタビューがこちら<絵本作家インタビュー>。ぼくの写真は9年前のものだが今とあまり変わらない(笑)。

※『わーらった』『にっこりにこにこ』とも、2010年にバオバブ・パブリッシングから韓国版刊行。

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「絵本作家の仕事 by 風木一人」は毎週月曜更新予定です。
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