なにわぶし論語論 第13回「禄を干(もと)めんことを学ばんとす」孔子の就職セミナー

「子張、禄を干(もと)めんことを学ばんとす。子曰く、多くを聞きて疑わしきを闕(か)き、慎んで其の余を言えば、則(すなわ)ち尤(とが)寡(すく)なし。多く見て殆うきを闕き、慎んで其の余を行えば、則ち悔い寡なし。言 尤寡なく、行い 悔い寡なければ、禄 その中に在り、と。」 (為政 十八)

孔子学団は、けっしてピュアな哲学者集団ではない。弟子たちは皆、政治家として世に出るために、古典や儀礼、歴史、倫理などを学んでいる。当然、仕官は皆の関心事である。
ここでは子張が、ずばり「どうすれば仕官できるのですか」と孔子に質問している。その答えが面白い。

「多くの人の言うこと(言ったこと)を勉強し、疑わしいことを除いて確かなことだけを言えば、批判されることが少ない。多くの人の行動を見て学んで、危なっかしいものを除いて自分で行えば、後悔することが少ない。発言で批判されることが少なく、行動で後悔することが少なければ、就職はおのずと決まる。」

言い換えれば「真面目にこつこつ勉強して、よく考えて行動すれば、きっとうまくいく」と言っているだけなのだが、大先生に言われると、なるほどと納得してしまう。また、結果論ではあるが、子路、子貢をはじめ孔子の弟子たちはその後、みんなそれなりのところで活躍しているのだから、結構説得力があるのである(*1)。

現代の就職対策セミナーで、同じようなことを言ったらどうなるだろう?
「たくさん知識を身につけて、確かなことだけ話すようにしましょう。たくさんの人の行動を観察して、良いところだけ真似しましょう。」
受講生から「金返せ!」と言われるのではないだろうか。

でも、結局のところ、求められる人材というのは、自ら調べ自ら考える能力のある人だろう。そういう正論をバシッと言うところが、孔子の偉いところである。
ただ、その孔子が、自分の仕官という点ではそれほどうまく行っていなかったのだから、なかなか君子の人生も辛いのである。

(*1 子張の生前の地位については、ちょっと調べてもわからなかった)

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