なにわぶし論語論第24回「君子は義に諭る」

「子曰く、君子は義に諭(さと)り、小人は利に諭(さと)る」 (里仁 十六)

――――君子は物の道理を理解し、小人物は利益(損得)を理解する――――

これはなんだろう? 「小人(小人物)はしかたねえなあ」という、ぼやきであろうか。それとも、修身の教科書的なお説教だろうか。
どちらにしても、あまり役には立たない。こんなお説教で、欲の皮が引っ込んで、清く正しい君子になれるなら、そんな簡単なことはない。

だが、孔子は教師である。それも、多数の弟子から熱烈に信奉され、数々の人材を育成した、有能な教師のはずである。有能な教師なら、お説教をするにしても、もう少し内容のあるお説教をするはずではないか。

ここは、少し言葉を足して、「『君子は義に諭り、小人は利に諭る』ということを念頭に置きながら言葉を選びなさいよ」と解釈したい。誰かを説得したい時、やり方はいろいろあるだろうが、相手を見て、相応わしい言い方をしなければいけませんよ、ということだ。
相手が君子(あるいは自分が君子だと思っている人)であれば、物の道理を説いて諭すのがよかろう。小人(あるいは自分を利口だと思っている人)を相手にする時は、こうすると得ですよと話すのがよかろう。
小人に対して仁だ義だと言っても仕方がない。逆に君子に対して損得ずくで話をしたら、却って頑なになってしまうかもしれない。

そういえば、以前タイタニック号のジョークを聞いたのを思い出した。こういう話だ。
いよいよタイタニック号が沈み始め、救命ボートが足りないことがわかった。女性と子供を助けるために、男性の中から志願者を募って船に残ってもらわなければならない。船長が説得に回った。まずイギリス人男性のところに行き、「紳士ならば残るご決断を」とお願いした。次にアメリカ人のところに行き、「女性や子供を救うために船に残れば、あなたはヒーローですよ」と言った。ドイツ人に対しては、一言「残るのが規則です」。最後に日本人のところに行き、「みなさん船に残られるそうです」。

だんだん何の話かわからなくなってきた。とにかく、こうやって相手に合わせて話し方を考えなければならないのだから、船長は、いや君子は辛いのである。

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