しまや出版 小早川真樹社長インタビュー第2回

小早川真樹社長インタビュー第2回です。しまや出版の専門である同人誌制作と、コミックマーケットに代表される同人誌即売会についてうかがいます。


年間約6000点の本を作る
しまや出版 小早川真樹社長

小早川真樹社長

同人誌について教えてください。

「同人誌はわかりやすくいえば『個人の方が自分で作って自分で売る本』ですね。内容はマンガ・小説が多いですが、他にも多種多様なものがあります。
売る場として代表的なのが同人誌即売会で、コミケ(コミックマーケット)は日本最大の同人誌即売会です。日本最大イコール世界最大ですけど(笑)。
有明のビッグサイト(東京国際展示場)を3日間全館借り切って夏と暮れに行なわれます。
数百人で始まったイベントと聞いていますが、今では3日間の総参加者数が55万人を超えるマンモスイベントです。

ただ、コミケ、同人誌が市民権を得てきたのはまだ最近のことだという気がします。
昔はオタクというとマイナスイメージの方が強くて、10年前ぼくがしまや出版に入ったころでも、コミケ、同人誌が一般メディアに取り上げられることは少なかったです。
数年前にNHKでもコミケを特集した番組が放送され、そのときに市民権を得た、表に出てきた感じがします。多くの方からすると、コミケって数年前から急に盛り上がってきたね、って印象ではないでしょうか。
今でも経営者として金融機関やメディアの方と話すときは、毎回一から説明します。同人誌はこういうもので、即売会はこういうものです、と。まだまだ知らない方が多いですから。

コミケだけ突出して有名ですが、じつは同人誌即売会は他にもたくさんあるんですよ。規模も内容も様々なものが、全国各地で、毎週どこかでは行われています。
同人誌印刷業と言うと、『コミケのとき以外はひまでしょ』と言われたりしますが(笑)、いえいえ毎週どこかでお仕事いただいています。

即売会の9割以上は日曜日なので、そこへ向けてルーティンができています。
火曜日が入稿の締切で、土曜日までに本を作り、日曜日に納品です。多くの場合、即売会のお客さまのスペースまで直接お届けします」

同人誌印刷業にはどんな特徴がありますか?

「多品種・小ロットという点ですね。うちは『初心者“にも”優しい』をキャッチフレーズにしているので、同人誌初心者のお客さまが多いのが特徴です。
年間約6000点の仕事をいただいているので、ならすと一日20点弱です。10冊作るお客さまもいれば、数千冊作るお客さまもいて、部数の平均は100~200くらいでしょうか。
データのチェック、刷版業務など、部数に関わらず一件ごと必ず発生する業務があります。皆さんプロではないので、原稿の作り方もいろいろです。だから点数が多いと原稿チェックなどは大変なんですよ。
でもしまや出版は、ずっと個人に特化してきているのでそのためのノウハウがあります。6000件のための仕組み作りができている。そこがうちの財産だと思っています」

しまや出版 向上1 しまや出版 工場2

(印刷・製本の機械が並ぶ、しまや出版工場内)

小早川社長インタビュー、20日(月)更新の第3回へと続きます。どうぞお楽しみに!


小早川真樹(こはやかわ まさき)
千葉県安房郡鋸南町出身。大学卒業後、大手英会話学校にて企画・広告業務を経験。その後マーケティング業界、無線通信機業界を経験。2007年1月に入籍すると4月に義父が急逝。同年9月より義父が営んでいた印刷・製本会社の しまや出版 に入社。全く未経験で知識が皆無のオタク業界、印刷・製本業務に苦労するも、未経験を逆手に取った戦略を実施し、廃業の危機を救う。現在は当社代表取締役として、個人の印刷物を「宝物」と位置づけ、多くのファンを獲得している。