岩崎書店 岩崎弘明社長第3回

7月の社長インタビューは岩崎書店の岩崎弘明社長をお迎えしています。3回目となる今回は、アメリカ生活20年以上、いまも3人のご子息と7人のお孫さんたちはアメリカにいる岩崎社長に、日本とアメリカについてうかがいました。


日本とアメリカ
岩崎書店 岩崎弘明社長

岩崎弘明社長

「誰だったかな、『日本はひと目で視野に入る』と言った人がいて、わかるなあと思います。極端がない。こじんまりとまとまっている。

アメリカは違うんですよ。ノーベル賞とる学者が数百人いる一方で、読み書きが充分できない人もいっぱいいる。貧富の差も巨大でしょう? トランプみたいなとんでもない大富豪から本当に何も持っていないような人たちまで。
それは良い面悪い面あるけれど、面白いかどうかでいえば圧倒的に面白いです。千差万別で、何があるか予想もつかない面白さがある」

「日本がダメかというとそうではないんですね。文化、芸術の高さ深さにはすごいものがある。それは歴史のないアメリカには真似できないことです。

日本は大陸と太平洋に挟まれて、歴史的に文化の吹き溜まりでしょう。朝鮮半島を経由して大陸文化が流入してくる。中国だけじゃなく、インドや、シルクロードを通じて西洋の文物まで入ってきて、でも太平洋にぶつかって出口がない。
出口がないから深く熟していく。非常に微妙なところに美や喜びを見つけるようになる。それが他のどこにもない日本文化のよさでしょう。

だから日本人は日本の文化を大切にすべきなんです。経済力や、まして軍事力なんか誇るんじゃなく、文化国家を目指さないと。
資源もない。国土も狭い。アメリカとは条件が全然違うんだから、同じところを目指してもダメに決まっているんですよ」

◇     ◇     ◇     ◇

「アメリカを考えるとき見落としてはいけないのは宗教です。もともと宗教の違いでヨーロッパを出た人たちが新大陸を目指しアメリカを作ったんですね。だから根本には清潔さがある。その延長で今のアメリカにもある程度の健全さがあるのだと思います。

確かにひどい人種差別もある。でも一方でオバマが選ばれるでしょう?
アメリカで会社をやっていたころ、30名以上の従業員がいる会社は黒人を雇わなければいけないという法律がありました。アファーマティブアクションですね。
バッシングというのも盛んにやっていました。黒人街の子どもたちを白人街の学校に、白人街の子どもたちを黒人街の学校にバス通学させるんです。

必ずしも成功したとは言えないでしょう。しかし、どうにかして差別をなくそうと、それはもうすごい努力をしている。その姿勢に根本的な健全さを感じます。
400年近く前メイフラワー号でやってきたピルグリムの精神は今も生きているんですよ」

次回はいよいよ最終回となります。厳しい厳しいといわれる出版界の将来について、岩崎社長の展望をうかがいます。25日(月)の更新をお楽しみに!


岩崎弘明(いわさきひろあき)
1940年神奈川県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。
父岩崎徹太は岩崎書店創業者、母治子は同社編集長。しかし読書少年ではなく野球少年として成長する。若き日から広い世界に憧れをいだき、初め日産自動車駐在員として、のち永住移民者としてアメリカ暮しを実現する。1993年帰国し、1995年岩崎書店代表取締役社長に就任。現在会長と社長を兼任する。(本インタビューでは社長と表記させていただきます)
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