トライトーン 成冨ミヲリ社長インタビュー第4回

成冨ミヲリ社長インタビュー第4回は、プロ向けのデッサンスクール「トライトーン・アートラボ」についてです。なぜプロ向けなのか? どんな経験が教えるために役立ったか? 今回も興味深い話が続きます。


あらゆるものの垣根を下げる

「うちの設立理念は『あらゆるものの垣根を下げる』です。
一つはクリエイター同士の垣根。たとえば音楽の人と絵の人って、それぞれの世界でまとまって、なかなか交流がないんですよ。でも私はアニメーションをやっているからどちらとも交流がある。じゃあ会わせようと。会わせれば面白いことが起こるだろうという発想です。

もう一つはクリエイターとビジネスの人。ここにも垣根があって、使う言葉から違うんです。そしてお互いに相手の言うことがわからないと不満を持っていたりする。
私はいろんなジャンルにいたから、どちらの言葉もわかるんです。だから間に入ることができる。翻訳者のような仕事だと感じることもありますね。

心がけているのは難しい言葉を使わないことです。専門用語ではなく、発注者のわかる言葉で話す。それができないとデザイナーも生きていけない時代だと思います」

トライトーン・アートラボ 集中講座

トライトーン・アートラボの集中講座。大人気でいつも満員。

池袋のデッサンスクール「トライトーン・アートラボ」について教えてください。

「始めて14年、生徒さんが常時150名くらい、のべだと1900名以上の方がここでデッサンを学んできました。
特徴はプロ向けであること。漫画家、アニメーター、デザイナー等、プロのクリエイターがスキルアップのために通っています。
はっきりプロ対象と言ったのはうちが最初かもしれません。プロは趣味の人と一緒は嫌なんですよ。本気の人とだけやりたい。

私も市民大学とかで教えることはあるし、趣味で絵を描くのは素晴らしいことだと思っています。たくさんの人にぜひやってほしい。でもトライトーン・アートラボでは趣味の講座はやりません。
中小企業には『うちはこうだ』という個性が必要なんです。全方位ではなく絞る必要がある。うちの学校が『プロ向け』を掲げるのはそういうことです」

トライトーン 成冨ミヲリ社長 デッサン中

生徒さんに混ざってデッサンする成冨ミヲリ社長。「色々な人の描き方を見られるのは面白いし刺激になります」

「前回お話したように、私はいい絵を描く才能はなかった。でも技術はあった。
だからそれを伝えたいんです。技術がもっと欲しい人たちを応援したい。それが学校経営の大きな動機です。
音楽では逆でした。技術はないのに、いろんな人から一緒にやろうと誘われました。それは私に自分でもよくわからないサムシングがあって、それを感じ求めてくれる人がいたということです。
技術はあるがサムシングがない絵。サムシングはあるが技術がない音楽。両方を体験してきたから今教えられている気がします」

成冨社長インタビュー、次回更新は31日(月)です。どうぞお楽しみに!


成冨ミヲリ(なりとみみをり)
東京藝術大学美術学部工芸科卒 (染織専攻)。アートディレクター・プランナー・実業家。
ゲーム会社、コンテンツ制作会社を経て、有限会社トライトーンを設立。富士急ハイランドや商業施設の企画デザイン、集英社のCMやドキュメンタリーTV番組におけるCG制作、アニメDVDの監督など幅広く活動。その他、デッサン技法書の執筆、音楽・小説などの制作もしている。「絵はすぐに上手くならない」(彩流社)を2015年に上梓。3万部を超えるヒットとなる。 トライトーン ホームページ