【 警鐘魔談 】LED・魔の点滅(5/最終回)

…………………………

筆者はルーブル美術館に3回行ったことがある。3回ともツアーではなく単独行動で行った。好きなように時間を使うことができたので、ほとんど丸一日、入りびたり状態で広大な美の殿堂をあちこち気の向くままに徘徊した。様々な世界最高峰の芸術作品を堪能しただけでなく、館内で(美術館提供の)大きなイーゼルを建てて原画を模写していた画家を見かけ、その画家をデッサンした。するとそれに気づいて近づいて来た画家から(驚いたことに)グラスを差し出されて赤ワインをいただいた。たまたま歩いて来た警備員も笑って画家がふるまう赤ワインを飲んでいた。
日本の(原画に近づいただけで即座に警備員が近づいて来て注意するような)美術館ではまず考えられない、のどかでフランス的な光景である。さらに偶然のオプションで、ルーブル美術館の地下で恐怖も味わった機会があった。

この美術館の前身は要塞であり牢獄である。2時間や3時間程度のツアーではまず案内することがない地下に降りていくと、そうした前時代の恐ろしくまがまがしい光景をまざまざと連想させる部屋がいくつもある。
筆者がある部屋に入り、石壁に残された爪跡を自分の指でなぞっていたときだった。バチンと音がして、いきなり真っ暗になった。「効果満点の停電だな」と思った直後に地下のあちこちで女性の悲鳴があがった。幸いというか残念というか、その時の停電は10秒ほどで回復した。筆者にとっては物足りないぐらいの短時間だったが、その程度の停電で、まあ場所が悪かったということなのだろうが、地下ではあちこちで気絶して倒れてしまった御婦人が出たらしい。あわただしく走って行く警備員を横目で見ながら、筆者は地下の徘徊を続けた。

記憶というのは面白いもので、この時は「ちょっとしたハプニング」程度にしか思っておらず、別段、気にもしていなかった。しかしこの「バチン、キャー、ドサッ」というハプニングは、その後10年たっても20年たっても筆者の記憶から薄れることはなかった。
人間は基本的に闇を恐れる動物である。「なぜ酒は夜に飲むのか?」「闇の恐怖から逃れるためである」というジョークは、現代の都会では全く意味をなさないジョークとなってしまった。しかし人間の本性は闇を恐れている。
筆者は日中でも車一台通過しないような山奥の村で暮らしているが、時々所用があって山を降り、買い物をし、喫茶店でコーヒーを飲み、夜になって山に戻ることがある。そんな時は街灯ひとつない暗闇の山道を帝国軍(筆者愛用のバイク)でゆっくりと登って行くのだが、じつに本能的で原始的な恐怖を堪能している。ジワリと迫ってくる恐怖と、ゲラゲラと笑いたくなるような歓喜が交互に点滅している。奇妙な心のざわめきがある。「これもまた魔の点滅」などと思う。

…………………………………………………**

都会での夜の照明に、今後、LEDがどんどん増えてくることはまちがいない。筆者撮影の写真がそれを証明している。LED点滅は、魔の点滅(2)でとりあげた「ポケモンショック」の「1秒間に24回」よりもはるかに早い。「1秒間に100回〜120回」(関東の50Hzでは100回/関西の60Hzでは120回)と言われている。ざっと4倍のスピードで「光/闇」の点滅を繰り返しているのだ。「ポケモンショック」でダメージを受けた人間、特に幼児が「その4倍のスピードなら害はない」などと言えるだろうか。むしろ「より深刻なダメージが、潜在意識のさらに深い部分で進行している」と真剣に疑うべきではないだろうか。現在のかつてない速度の商品流通と軽率な広告コピーは、たった数年の実験結果で「10年間保証!」などと電球パッケージに印刷している。
つい先日、「30年後にこの地域の年齢構成は……」という地域おこし講演を聞きつつ、「30年後?……人類はいるのか?」と筆者は思った。

…………………………………………………**

最後に筆者がLEDを嫌うもうひとつの大きな理由を急ぎ追加しておこう。それは「魔の点滅(2)」でも少し触れている「ブルーライト問題」である。
青く光る蛍光管のようなものが野外に設置されているのを見たことがある人も多いと思う。筆者も田舎の温泉旅館や郊外のホテルなどで見たことがある。これはなにか。ブルーライトで殺虫しているのだ。それほどブルーライトは昆虫の複眼に対し強烈な威力を発揮する光源なのだ。仮面ライダーはブルーライトを見たら(見ただけで)「ギャーッ」と叫んで苦しむのではないだろうか。
冗談はさておき、虫を死に至らしめるほどの殺虫ビームが、スマホにも、コンピュータ画面にも、街の照明から信号機に至るまで使用されているのだ。

「レーザー光線を目に当ててはいけない。ヘタをすれば失明する」という事実は多くの人が知っている。ところが「スマホをじっと見つめてはいけない。目や潜在意識に害を及ぼす」と言えば多くの人が「そんなバカな」ではないだろうか。それは実験の結果、「害なし」と判断されたからではない。実情は「害があるのかないのかよくわからない」という段階のまま、あまりにも早く広く、多くの人々の日常生活に浸透している。この現実をあなたはどう見るか。
「一日中、スマホ見てますねぇ」
あどけない女子高校生の笑顔をテレビで見た。30年後、彼女の目がどうなっているか。想像できない。想像したくない。あなたも十分に注意していただきたい。自分の目と潜在意識を守っていただきたい。

………………………………………………( 完 )