『ボローニャてくてく通信』はじめます byてらしまちはる

ボローニャブックフェア会場「Bologna Fiere」

ボローニャブックフェア会場「Bologna Fiere」

ホテル暴風雨読者のみなさま、はじめまして。てらしまちはると申します。日ごろは絵本の話題を専門にフリーライターをしています。
少しの間、もうすぐ動き出す小さな試みについてお話させてください。

「まじめでヘンテコな読み物をはじめます。ご一緒にいかがでしょう?」

というお誘いです。

『ボローニャてくてく通信』創刊します

■もくじ(部分・予定)
・ボローニャブックフェア2018ニュース
・持ち込みできた出版社・口コミ一覧
・国内関連展示スケジュール2018・2019
・受賞者のその後、たけうちちひろさん
・「わたしの売りこみスタイル」、オオノ・マユミさん
・「つかう人々」
・会場への行き方 etc.

『ボローニャてくてく通信』Facebookページ

中身はけっこう、まじめです

ホテル暴風雨読者なら「ボローニャブックフェア」をご存知の方もきっと多いことでしょう。毎春イタリアで催される、世界最大の絵本見本市です。今年の該当期間は3/26〜29の4日間。いま私が準備する『ボローニャてくてく通信』は、まさにこれをテーマに据えた一冊です。

本通信は、ボローニャブックフェアをキーワードにもつすべての日本人に開かれています。たとえば、はじめてフェアへのり込もうと考えている人、何年もフェアへ通っている人、ボローニャやその他海外でのフェアに興味をもつ人。イラストレーター、絵本編集者、なんとなく絵本が気になる人。そんなみなさんに読んでもらいたい読み物です。

イラストレーターの名刺類が壁をうめつくす(2017年)

イラストレーターの名刺類が壁をうめつくす(2017年)

内容はまるごと一冊、見本市やボローニャの街、絵本についてのことばかり。巻頭には、これまで私がウェブニュース記事として春に公開してきたブックフェアレポートを、絵本人向けにより深く伝える特集「ボローニャブックフェア2018ニュース(仮)」があります。

ほかにも、イラストレーター展の受賞経験者にフォーカスしたインタビュー「受賞者のその後(仮)」や、現地滞在が楽しくなる複数のコラムを用意。たけうちちひろさんやオオノ・マユミさんら、いまをときめく人々にご登場いただきますよ。やわらかな読み物もふんだんにまじえて、フェアや街、人の魅力を伝えます。

特に「会場への行き方」は、絵地図も使ったていねいなフォローを心がけました。これは私自身が初渡航でかかえた心もとなさにヒントを得、新たにフェアへのりこむ方の安心材料にしてほしいとの思いがこもっています。

もくじ以外の詳細も、こちらに載せておきますね。

■配布形態
2018年6/15(金)、7/13(金)、8/3(金)の全3回、
事前登録メーリングリストにて配信
※3回すべて受け取ると『ボローニャてくてく通信』1冊が完成します。

■メーリングリスト登録期間
4/3(火)9:00~5/27(日)23:59まで

■メーリングリスト登録料 3240円(税込)

■くわしくはこちらへ!

ボローニャ国際絵本原画展の入選作をみる人々(2017年)

ボローニャ国際絵本原画展の入選作をみる人々(2017年)

私の渡航は今年で3年目を迎えます。イラストレーターでも編集者でもなく、ライターとして取材だけを目的に毎年ブックフェアを見ています。

フェアはよく、同時多発的にさまざまな奇跡が起こる場と表現されますが、本当にその通りです。目うつりするほどのわくわくを追いかけながら、片隅ではいつも、この面白さをみなさんと共有して育てられる場があればと望んできました。この『ボローニャてくてく通信』は、そんな中心地点にしたいと手がけたものです。

これまで“ボローニャ”は、私をふくむ多くの日本の絵本人にとって「行った人だけがわかる場所」だった部分もあったのではないでしょうか。先だって発信されているさまざまな情報に加え、『ボローニャてくてく通信』がいろいろな角度からフェアを眺めることで、行ったことがある人もない人も、このイベントをより立体的に共有できたら――。そんな思いで日々せっせと、本通信を作っています。

外見はちょっと、ヘンテコです

「配布形態」を読んで、おや? とお気づきの方もおられるでしょう。『ボローニャてくてく通信』は完成した「紙の」雑誌が届く商品ではありません。お申し込みいただいた方に専用メーリングリストに入ってもらい、そこで3回にわけて「印刷データ」が届く形式です。

「印刷データまで作って、なんで本にしないの?」。そんな疑問をいだく人は多いことでしょう。風変わりな形式になったのには、トホホな事態と一大転換がありました。

今年1月のある日。紙の本を作るべく、デザインも絵も意中の人々に頼みおわったころでした。時を同じくして出てきた印刷見積もりが、目ん玉のとび出るほどに高かったのです。「印刷して発送までしたら、一冊がとんでもない金額になってしまう」。はじめての媒体作りに暗中模索で、作業の順序が前後してしまったのがトホホの原因でした。できないものは仕方ありません。ここで、紙に刷るのを泣く泣く断念したのでした。

でも、絵もデザインも進んでいます。そしてどちらも、きっと心ときめくものが仕上がってくるに違いありません。ここでやめたらもう見られないと思うと、きっぱりあきらめられない気持ちが体の奥からわいてきました。

現状をなんとか活かしつつ、値段もある程度落ち着かせる方法はないものか。そう考えて、たどりついたのが「メーリングリストで印刷データを配信する」というヘンテコな案でした。

ページデータまでを私が作り、あとの印刷を読者のみなさんにゆだねるやり方です。本を「完成形」とすれば、カッコわるいのかもしれません。けれど、一冊で表現したいものがしっかり読んでもらえることに変わりはありませんし、価格もそれなりに抑えられます(といっても安くはないですが……。これは後述します)。

ハンモック型ベンチなど、毎年ちがうディスプレイも楽しい(2017年)

ハンモック型ベンチなど、毎年ちがうディスプレイも楽しい(2017年)

なにより、みなさんに本作りに参加してもらえるのが、「たなぼた」ではあれ、いいところです。当初から、読み手となんらかの形でコミュニケーションできる場にしたいとも思っていました。でも、おしつけ的になるのも嫌で……。このやり方なら、紙で読みたい人は組み立てを選べますし、データのまま、あるいはプリントアウトのままでも見られます。もちろん、これだけで「コミュニケーションできている」とはならないのですが、これを皮切りにゆっくり培っていきたいトピックではあります。

こうした原案に、私自身の作業時間確保のための「3回配信」を加えて、とりあえずやってみようとなった次第です。毎回、お手元に誌面を受けとるたびに「てらしま、さっきまで書いてたんだなあ」とライブ感を楽しんでいただけると思います(笑)。

そうそう、値段ですが、これがやっぱり難しいんだなあと痛感しました。本通信を作るには渡航取材が必要で、どうしてもお金はかかってしまいます。こういうところを企業なら、部数を増やして値段をさげるのでしょうが、受注作業も一人でまかなうため「いくらでも受けられます」ともいえないのですね。

初渡航の年の筆者、エントランスで(2016年)

初渡航の年の筆者、エントランスで(2016年)

このくらいならなんとか……というところで計算すると、この金額になりました。それでも読みたいという方に、買っていただければと思います。ものをつくるのって、やっぱりお金がかかりますね。

いつまでも未完成だっていいじゃない

「今できることをやってみる」というのは、毎年のブックフェア取材で得た大切な気づきでもあります。トホホな事態がきっかけではあったけれど、本通信にもボローニャでの教訓は立派に生きているなあ、なんてしみじみ思います。

とりあえず、この形で出発します。が、これで完成でもないんじゃないかと考えているんです。今年の配信を読んだ人に「こんな話題が読みたい」「もっとこうしたら楽しいんじゃない?」と教えてもらい、手をくわえるのもアリですものね。

いつまでも未完成でも、案外わるくないのかも。そうこうしているうちに、しょうがないなあ、印刷してやるよと言ってくれる奇特な方があらわれるかもしれませんし……。

今できることを、できる形ではじめる『ボローニャてくてく通信』。ご興味をもっていただけたら、「ボローニャてくてく通信 Facebookページ」を開いてみてください。4/3(火)より、受付スタートです!

ボローニャてくてく通信

ホテル暴風雨での本連載は、3回シリーズ。次回4/18更新分では、ボローニャブックフェア後のダイジェストレポートを公開します!
今年、てらしまちはる発信のボローニャ関連ウェブ記事はここ、ホテル暴風雨だけ。ご期待ください。


てらしまちはる(寺島知春)
児童書編集を経て、絵本専門フリーライター。絵本ナビなどの各種ウェブ媒体や雑誌で執筆。2016年9月には雑誌『AERA』(朝日新聞出版)で、読書関連特集に登場した。女子美術大学ほかで特別講師も。2016年より始めたボローニャブックフェア独自取材を今年、『ボローニャてくてく通信』として発表する。てらしまちはる公式HP http://terashimachiharu.com/