祝!カープ優勝、日米の野球映画の傑作2本「マネーボール」と「男ありて」

何を隠そう、私は37年来のカープファンだ(79年の日本シリーズ広島vs近鉄第7戦、9回裏「江夏の21球」をリアルタイムでラジオで聞いている)。
前回のリーグ優勝から苦節25年。耐えに耐えて今年の優勝だ。嬉しくてしょうがない。
昨年は黒田が大リーグから帰ってきてもダメだった。マエケンも居なくなり、もう自分が生きている間に優勝は見られまい(!)とまで思ったくらいだ。
それが今年の「神ってる」快進撃。優勝の日、私も泣いた。次のクライマックスシリーズも乗り越えろ!

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さて、前回は広島が舞台の切ない原爆映画を紹介したが、今回はカープ優勝を寿いで面白野球映画を日米から一本ずつ紹介したい。

マネーボール ベネット・ミラー監督 ブラッド・ピット主演

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最近の日本映画にはプロ野球を描いた映画がないので(2002年にはトラのマスクを被ったピッチャーが阪神で活躍する「ミスタールーキー」という佳作があった)、まず、野球大国アメリカから爽やかな感銘を与える作品として「マネーボール」(2011)を挙げる。(監督:ベネット・ミラー 出演:ブラッド・ピット ジョナ・ヒル フィリップ・シーモア・ホフマン)

これは大リーグの実話の映画化。広島のように資金がない貧乏球団オークランド・アスレチックスがコンピューターで分析して確率的に勝てる選手を安く獲得して、試合に起用し勝ち進む。それを指揮するGMが主人公だ(ブラッド・ピットが演じる)。

このやり方が効を奏し、2002年のシーズン、最下位から勝ち上がり連勝を続けていく。連勝の大リーグ記録を達成する試合の展開はドラマ以上にファンタスティックだ。この試合の演出は当時の実際のフイルムを織り交ぜて素晴らしいシーンになっている。そして優勝を迎える。

シーズンが終わって、主人公がある決断をする。それが、人は金ではない、「野球の何かを変えること」という信念に基づくのがいい。なんだかカープに似てないか。

離れて暮らすティーンエイジの愛娘がギターを伴奏しながら歌う歌がとても可愛い。娘はパパが悩みながらも闘っているのをちゃんと知っている。誰かがちゃんと分かっている。
主人公が元有力新人だが挫折を味わいそこから這い上がったというのも好きだ。

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そして、好きな映画をもう一本、知る人ぞ知る邦画の隠れた秀作を紹介したい。
広島カープが結成されてプロチームとして戦い始めた昭和30年に作られた「男ありて」だ。

映画パンフレット「男ありて」志村喬 三船敏郎 岡田芙莉子

監督:丸山誠治 出演:志村喬 三船敏郎 岡田芙莉子

これまた最下位脱出を目指す弱小チームを率いる監督志村喬の野球一筋の姿と家族のドラマを描く。チームのコーチ役は三船敏郎という黄金コンビ(「野良犬」「七人の侍」等で共演)。家でも戦略を考え続け、新人ピッチャーを下宿させ、子供との約束を忘れてしまうくらいだ。妻は愚痴を言うわけでもなくそんな夫に献身的に尽くす。

ラスト近く、この試合で最下位か4位かが決まるという大事なリーグ最終戦、リードしながらの九回表、味方のキャッチャーが負傷し、メンバーが足りず、何と老いたる監督自らがマスクを被り新人ピッチャーの球を受ける(!)、という展開になる。呆れる観客を一向に気にせず監督は「しまって行こう」と大声を出す…(20年くらい前、スクリーンで見た時、監督のプレーに対して場内から拍手が起きたことを鮮明に覚えている)。

この映画はそういう野球の面白さだけでなく、この時代の夫婦愛も描いている点がいい。
夫は仕事一筋の人間だが、自分勝手に生きようとするわけではない。チームが勝つ為には寝食を忘れて、時に自分を忘れて打ち込まねばならないという信念を生きている。
そして、そういう、夢中になる夫の姿が好きだからこそ、妻も夫を支えるのだ。自分が犠牲になっているとは考えない。言葉には出さないが、夫と妻の信頼がある。そこが美しい。

50年代邦画の黄金期に作られた日本映画珠玉の一本と言っていい。

※「男ありて」画像は映画パンフレットより