中国映画「狙った恋の落とし方。」と「唐山大地震」

最近、中国映画で、ワクワク見たい気持ちになる映画がなかなか来ない。
入ってくる映画は2極分解している感じだ。公開されるのは、結構人を選ぶ様なアート系の映画か中国社会の矛盾や暗い部分を暴き告発するようなドキュメンタリー作品群だ。
その中間の、ポピュラーで親しみやすい映画や人気のある女優さんが出るような話題作がちっとも来ない(ような気がする)。

思い起こせば、83年のチェン・カイコ―の「黄色い大地」を皮切りにミニシアターを中心にして多彩な中国映画がどんどん入ってきた。テーマも面白く映像の力もある作家性の強い作品だけでなく、コン・リーやチャン・ツィイーなどの女優さんの映画も見られ我々はいそいそと映画館通いをしたものだ。
香港映画や台湾映画もどんどん面白いものが入ってきだして、映画ファンとしてはアジアに目を開かされ楽しい映画体験を続けていったものだ。
そして21世紀に入ると怒涛の韓流ブームが訪れ韓国映画がどんどん質量ともに圧倒されるくらいに入ってきた。それはもう、幸せだったと言っていい位だ。(7月に中国語を学ぶ勤務先の中高生60名ほどに2002年の「あの子を探して」という作品を見せる機会があったのだが、一緒にご覧になった中国人の3人の中高年の講師の先生もいい映画ですねえ、とおっしゃっていた)

しかし、気が付けば、最近いつの間にか中国映画の話題作が無くなってきたように思う。もちろん、劇映画のジャ・ジャンク―(「長江哀歌」「山河ノスタルジー」)やロウ・イエ(「スプリング・フィーバー」)や、記録映画のワン・ビン(「無言歌」)などが入ってきたが、かなり通向けと言ったらいいか、作家性が強く、見る人を選ぶ様な作品なのだ。私はどうもその作品が苦手だ。
スターが活躍するポピュラーな映画が少なくなったのは、中国の経済成長や大国化と関係があるのだろうか。どうなっているのだろうか? 残念ながら映画雑誌や新聞などにもその種の解説はほとんど見かけない。

映画「狙った恋の落とし方」監督:フォン・シャオガン 出演:グォ・ヨウ スー・チー

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そんな中、期待している監督が一人いる。フォン・シャオガンという監督であり、本国中国でメガヒットの作品を何本か撮っている。
まず「狙った恋の落とし方。」というタイトル(安っぽい!)で、原題の意味は「誠実でなければお付き合いなし」位。
この作品は、リッチになった中年男性が婚活していくラブコメディだが、後半何と若い女性と北海道旅行をする。釧路あたりを車で走っていくが映像も綺麗だ。この映画の大ヒット(歴代一位)で中国人の日本への観光旅行が増えたというから驚く。
2008年の作品だが、北京オリンピック前後の豊かになった中国社会を背景にしている。中年おじさんの人間味のある人物像がとても面白い。ユーモアのある洒落た会話もいい。都市も垢抜けして中国社会も変わったと実感する。

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映画「唐山大地震」監督:フォン・シャオガン 出演:シュイ・ファン チャン・チンチュー

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さて、好きな映画をもう一本!
彼の作品で一番好きなのは2010年の「唐山大地震」という映画だ。
これは、76年に実際に唐山で起きた大地震に見舞われたある家族の変遷の歴史を描くが、決して地震パニック映画ではない(勿論、映画の最初の方で地震発生は描かれているが)。そうではなく、地震を経た後、経済成長や激変する社会を背景として、普通の庶民の家族が激動の時代をどのように生きてきたかということを、親子の情愛も含めながら細やかに描く秀作なのだ。
一つの家族を描くが、この家族像は中国の普遍的な姿だろうと思う。この映画ほど、中国の人がどんな想いでこの数十年を生きて来たかが心に沁みるように理解できる映画はなく、かなり感動した。秀作と呼ぶ所以である。
この映画は実は日本では2011年の春に公開予定であったが、3.11の大地震と津波を考慮して公開が2015年まで延期になった作品だ。

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