絵本の文章を書く5「ラブレターであり挑戦状でもある」

ぼくは自分が文を書いて、絵描きさんが絵を描いて、分業で絵本が完成するとはまったく考えていない。ふたりで一つのものを作ると考えている。だから絵に関しても意見は言うし、絵描きさんからも文について思うところがあればすべて言ってほしい。絵本作家ならば(文担当であれ絵担当であれ)、文しかわからない人や絵しかわからない人はいないはずなのだ。両方をフルに使う作品をプロとして作っているのだから。

ぼくが絵描きさんにお渡しするテキストはラブレターであると同時に挑戦状でもある。
ラブレターである意味はすぐおわかりいただけるだろう。「世界に100万人の優れた画家がいても、この絵本を最高のものにできるのはあなたです!」という気持ちでお願いするということだ。
では挑戦状とは何か?
ぼくは絵本の文章作家の大事な仕事は、画家のいいところを引き出すことだと考えている。どんなテキストをぶつけるかで、同じ画家でも出てくる絵が違うのだ。
いつも頭にあるのは「新しいドアをノックする」こと。100冊以上作ってこられた大先輩であっても、何か新しいもの、これまでの100冊にはないものを見せてもらいたいと思ってテキストをお渡しする。
そのためにはその方の過去の作品と似ていてはいけない。「こういうのは前にもやった。あの感じでやればいいな」とすぐ見透かされるようではダメなのだ。

「これをオレに描けっていうの?!」と呆れられ怒られるくらいが理想だがなかなかそこまではできない。それでも、手持ちの技だけではこなせない、その作品のために新しい技を編み出さざるを得ないものをぶつけたいとはいつも思っていて、それが挑戦状という意味だ。

「こういうの描けますぅ?」とお渡しして「描けるに決まってんだろ!」とコテンパンにしてもらいたいのだ。

前回ふれた、あべ弘士さんがおっしゃっていたことにも通じるだろうか(こちら)。「バッカなこと」だからやる気になるということ。

自分のことは全部わかっていると思うのは大間違いで、人間の中には自分でも気がついていないものがたくさん眠っている。それらに揺さぶりをかけ呼び覚ますには、人と交わるのが一番だ。自分にはない発想と切り結ぶことで新しいドアが開く。

どんな絵描きさんと共作するときも、その方がひとりで作った絵本と似たものにならないように、他の文章作家と組んで作った絵本とも似たものにならないように、と思っている。

ライズシティ池袋のフクロウ

東池袋にいた「記事とは関係ない」変なひと

「絵本作家の仕事」は毎週月曜更新予定です。
ホテル暴風雨の記事へのご意見ご感想をお待ちしております。こちらから


トップへ戻る