BBCで見るアメリカ大統領選。なぜドナルド・トランプだったのか?(後編)

前編からの続きです。

3の記事では中国における今回の選挙についての報道の様子と、中国政府の思惑について言及しています。

まず、中国の一般市民レベルでは、特にトランプ氏のはっきり言う物言いに好感を持つ人が多いようです。
また、あれだけメディアコントロールが入っている国であるにも関わらず、今回の選挙の様子はきちんと報道されているようです。そして中国メディアは、民主主義における民衆扇動の危険性に触れながら、一党独裁のメリットについても報道しているようです。
文化大革命における恐怖がまだまだ色濃く残っている中国において、アメリカの民主主義への神話を色あせさせることが目的のようです。

さらに、11月9日は「チャイナドリーム(周近平主席が掲げるスローガン)」の観点からすると、記念日になるかもしれないとも書かれています。

なぜなら、中国の政府は既にトランプ氏と戦う準備を整えており、貿易面でトランプ氏に得点を与える代わりに、アジアにおける地政学で得点を取ろうとしているであろうとしています。トランプ氏の考えは経済面でも軍事面でも、アメリカの孤立とアジアでの影響力の低下を招き、アジアにおける中国の利権拡大の好機だとしています。中国の地政学者の中には、アメリカのパワーの低下とアジア再編の好機なので、是非トランプ氏にはその思いを遂げてほしいと思っている人もいる、としています。

これらの報道も踏まえ、私が今回の選挙結果について感じたのは、イギリスのブリグジットの時と状況が似ているということです。(イギリスEU離脱関連記事へ

特に、変革を求める人たちが、ドラスティックな変革をもたらそうとする政治家を支持するという構図、そしてそういったことを言っている政治家は世の中一般では批判されているため、表だって支持を表明しづらいという点です。

他の日記でも書きましたが、人々は自然と同じ言語を話し、同じバックグラウンドを持つ人々とグループを作ります。イギリスに留学に来た人たちでも、中東の人たちは中東の人たちと、中国人は中国人とグループを作ります。そうしている人たち自身は非常に快適なのでしょうが、イギリス人たちからすれば異文化が侵入してきた、という恐怖心をもたらしてしまいます。
そしてその恐怖心を表だって表現すれば差別主義者としての誹りを受ける可能性があり、表層的には何も言わないし、言えません。しかし何も言わないということが問題を解決するということはなく、むしろ知らず知らずのうちに心の中に澱みとして沈殿していき、最後には爆発し、極端な方向に走らせることになります。

今回の米大統領選は、上記の記事からもわかる通り、どちらの候補もあまり評判のよくない人同士の戦いだったようです。そして、アメリカという国の大統領は今なお、アメリカ人だけ、あるいはアメリカ人と日本人の間だけではなく、アジアにおける日本の立場にすら影響力を与える存在です。
そのような人が、評判のよくない人物の中から感情の爆発の結果選ばれる、ということは非常に残念なことですが、そのことでアメリカ人だけを責めても何も解決しないのでしょう。

我々も含め、他国を訪れ、他国で生活をし、他国でビジネスをしようとしている人間は、それぞれの国の文化に理解を示し、自分たちの行動を改める必要があるのかもしれません。そして、綺麗ごとで臭いものに蓋をせず、(感情を排しながら)論理的に議論ができる環境が醸成される必要があるのだと思います。