雨だれの音 1/3話(出典:碧巌録第四六則「鏡清雨滴声」)

平凡も神聖も超越して、一撃で成立する。
鎖を断ち切り檻を打ち壊し、ズバリひと言で判決を下す。
それはまるで、薄氷の上を行き、刃の上を走るようなもの。

一切の現象から離れることなく、一切の現象を越えてゆく。

さて、私はいったい何の話をしているのでしょうか?

とある僧と鏡清和尚の会話をご紹介しましょう。

鏡:「おい、外から物音がするが、ありゃいったい何の音だろうね?」
僧:「いや、雨だれの音ですが?」

鏡:「人はみな、自分の外側のことばかりを追いかけて、遂には自分を見失ってしまうんだよなぁ・・・ 本末転倒とはこのことだね。」

僧:「和尚はどうなんですか?」
鏡:「ワシも危ないところだったが、辛うじて自分を見失わずに済んでおるよ。」

僧:「・・・それはいったい、何の話でしょうか?」
鏡:「究極の悟りを得ることなど、それをズバリひと言で表現することに比べたら簡単なことだよなぁ。」

また別の僧との会話です。

鏡:「おい、外から物音がするが、ありゃいったい何の音だろうね?」
僧:「いや、ハトが鳴いている音ですが?」

鏡:「無間地獄に堕ちたくないのであれば、仏さまの悪口を言うんじゃないぞ!」

また別の僧との会話です。

鏡:「おい、外から物音がするが、ありゃいったい何の音だろうね?」
僧:「カエルがヘビに飲み込まれる音じゃないですか?」

鏡:「人はみな苦しみのただ中にいるというのが仏教の基本的人間観だが、苦しみを売りにする人間がいるとはなぁ。」

―――――つづく

☆     ☆     ☆     ☆

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