「一」の帰る場所 2/3話(出典:碧巌録第四五則「趙州万法帰一」)

また別の機会に、とある僧が趙州和尚に問いかけました。

僧:「達磨大師はなぜ、わざわざインドから中国までやってきたのでしょうか?」
州:「庭先に生えているイブキの樹だね。」

僧:「・・・和尚、ちゃんと質問に答えていただけませんか?」
州:「なにを言うか。ワシはちゃんとオマエの質問に答えておるぞ!」

僧:「もう一度お尋ねします。達磨大師はなぜ、わざわざインドから中国までやってきたのでしょうか?」
州:「庭先に生えているイブキの樹だね。」

おわかりでしょうか?
一般人には動かせない究極の真理を、軽々と動かして天地を覆い尽くしてしまう趙州和尚の力のもの凄さを。(逆に動かせないとなると、その場から一歩も動けなくなってしまうのですが)

そもそも趙州和尚は、ここで仏教の話をしているのでしょうか?
これまでこのシリーズで取り上げてきた趙州和尚のエピソードには、難しい仏教用語はひとつも登場していませんが、質問者は全て、その場で悟りきらないまでも重大なヒントを得ていますので、仏教と関係ないとも言えないと思いますが。

木平和尚にも似たような話があります。

僧:「仏法の究極の境地とは、いったいどのようなものでしょうか?」
平:「こりゃまた大きな冬瓜だなぁ!!」

道詮和尚にも似たような話があります。

僧:「人里離れた深山幽谷にも仏法はあるのでしょうか?」
詮:「そりゃ、あるよ。」

僧:「それはいったい、どのようなものでしょうか?」
詮:「大きな石は大きいし、小さな石は小さいのだよ。」

雪竇和尚はこのエピソードに対して、次のようなポエムを詠みました。

使い古して先っぽが丸まった錐に向かってツッコんでいくなんて。

いったいどれほどの人が七斤の麻ジャケットの重さをご存知なのか?

おっと、そのジャケットが西湖に放り込まれたぞ!

潰されそうになっていた人の重荷を吹き飛ばしてくれたのはよいけれど、その風を吹かせる役を誰に譲ったらよいものやら。

―――――つづく

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