別の日、趙州和尚が掃き掃除をしていると、とある僧がツッコミを入れました。
僧:「おやおや、和尚がチリを掃き集められている! 貴方はピッカピカの立派なお方。いったいなぜチリがあるのでしょうか?」
州:「いやいや、チリはワシから出たのではなくて、外から飛んできたんじゃよ。」
僧:「この世界は完璧でチリひとつない、と聞いておりますが?」
州:「いや、それでもちょっとはあるんじゃよ。」
また別の日、とある僧が趙州和尚に尋ねました。
僧:「「道」とはいったいどのようなものなのでしょうか?」
州:「そこの壁の外がそうじゃが?」
僧:「いやいや、その道じゃなくて、真理へ通じる「道」をお尋ねしているのですよ!」
州:「全ての道は長安に通じているぞ。」
趙州和尚は万事この調子で、なんでもない日常会話のような感じで極めてハイレベルなことを言い、弟子たちを教え導いて論理が破綻することがありませんでした。
雪竇和尚は、冒頭のエピソードについて次のようにコメントしました。
とてつもなく高い境地におられながら、それをひけらかすようなマネをせず、一見とっつきやすいように見えるのが趙州和尚の凄いところだ。
海釣りに行けば、必ず巨大なカメを釣りあげられる。
灌渓和尚は自分のことを激流に譬えられたが、ご苦労なことだね。
―――――つづく
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