殻を破るとき 1/4話(出典:碧巌録第十六則「鏡清草履漢」)

鏡清(きょうしょう)和尚と弟子の僧との会話です。

僧:「師匠、タマゴの内側からコツコツつっつく音がします! きっと殻を破ろうとしてるんですよ! 早く外からもつっついて出してやってください!」
鏡:「・・・やってもいいけど、生きていけるかな?」

僧:「もし生きられなかったら、世間の笑いものですよ!」
鏡:「うむ、やはりまだ草むらでまごまごしとるようじゃな・・・(苦笑)」

一本道は歩きやすく迷う心配もないので楽なように思えますが、横道の全くない道は実はとても危険な道です。

誰かの敷いたレールを外れ、世間的な事柄だけでなく仏や師匠の束縛からも離れることができたなら、そこには、見えず、聞こえず、言葉にもできない自由な境地があることを知るでしょう。

そんな境地に至った人のところには、神々が祝福の花を贈ろうと思ってもたどり着けず、悪魔がつけ狙おうと思っても入口がわからないハズ。

その自由さときたら、一日中修行していても全く修行していないのと同じで、一日中話していても全く話していないのと同じです。

この境地を得て初めて、自由自在に冒頭の会話のようなつっつきあいができるようになるわけです。

鏡清和尚は雪峰和尚のところで修行して悟りを得た後、いわゆる「啐啄同時(そったくどうじ)」の芸風を確立し、弟子たちの成長レベルをよく見定めて絶妙のタイミングで教え導きました。
(まぁ、それができないようではとても師匠は務まりませんし、それに気づかないようでは弟子も務まらないとも言えますが)

―――――つづく

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