殻を破るとき 2/4話(出典:碧巌録第十六則「鏡清草履漢」)

また別の弟子の僧が進み出て質問しました。

僧:「外からつっついたら、内側からもつっつき返す音がする。師匠にとってこれはどういう状況でしょうか?」
鏡:「師匠にとってはグッドニュースだね。」

僧:「内側からつっついたら、外側からもつっつく音がする。これは弟子にとってどういう状況でしょうか?」
鏡:「弟子がようやく本気を出したということだね。」

まぁ、鏡清和尚の「啐啄同時の芸風」というのはこういった感じです。

冒頭のエピソードに登場した弟子の僧も、この辺の芸風をよく理解していたからこそ、「私は殻を破ろうとしています。師匠、どうぞつっついて出してやってください!」と問いかけたのです。

師匠の鏡清和尚は達人らしい見事なさばきで弟子のパンチを受け止めつつ、「やってもいいが生きられるか?」とキックを繰り出しました。

弟子も師匠のキックをかわしながら「生きられなかったら世間の笑いもの」とチョップを返したわけですが、そこで鏡清和尚はバッサリ「まだ草むらでまごまごしている」と言って切り上げました。

この弟子はなかなかのやり手だと思うのですが、なぜ鏡清和尚はそれを否定するようなことを言ったのでしょうか?

南院和尚は弟子の僧たちに向かって言いました。

院:「このところ「啐啄同時」が流行っているようだが、ワシに言わせればあんなものは役に立たない。百歩譲って「啐啄」のタイミングがわかったとしても、同時に「啐啄」などできるわけがないからじゃ!」

するととある僧が進み出て質問しました。

僧:「「同時に啐啄」というのは、どういう状況なのでしょうか?」
院:「本物の達人はつっついたりしないし、つっつき返したりもせんものじゃ。そんなことをしたら師匠も弟子も、どちらもダメになってしまう。」

僧:「・・・すみません。よくわかりません。」
院:「どこがよくわからないのじゃ?」
僧:「どこがわからないのかわからないのです。」

それを聞いた南院和尚は僧を棒で叩きましたが、やはり理解できていない様子だったので、和尚はその僧を追い出してしまいました。

その僧は納得がいかず、雲門和尚のところで南院和尚に問答の末に叩き出されたことをグチったところ、雲門和尚に「で、南院和尚の棒は折れたのか?」と言われ、ハッと気づくところがありました。

そしてその僧は直ちに南院和尚のところに引き返しましたが、和尚は既に亡くなられていました。

風穴和尚がその僧を見かけて声をかけます。

穴:「おう、オマエさんは南院和尚に「啐啄同時」の話をふって叩き出されたヤツではないか! いったいあの時のオマエさんはどんな感じだったんじゃ?」
僧:「あの時の私は、南院和尚が照らしてくれた灯りの中を行くような感じでした!」

それを聞いた風穴和尚は、「ふむ、どうやらわかったようじゃな。」と言ったとか。

―――――つづく

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