相手次第 1/2話(出典:碧巌録第十四則「雲門対一説」)

とある僧が雲門和尚に尋ねました。

僧:「お釈迦さまが一生をかけて教えてくださったのは、要するに何でしょうね?」
雲:「相手次第だな。」

お経などの記録によれば、お釈迦さまは究極の悟りを開かれてから亡くなられるまでの四十九年間で三百六十回の講演会を実施したとのことですが、いきなり結論を言うこともあれば順を追って結論に至ることもあり、またその結論も本当に真実ズバリのこともあれば譬え話によって真実をほのめかすだけのこともあればと、その教え方は実に多種多様でした。

この僧はそれらの教説を読んだことでかえってわけが分からなくなり、「要するにどういうことか?」と尋ねたわけなのですが、それに対して雲門和尚はただ「相手次第(対一説)」とだけ答えました。

雲門和尚は質問に対してあまり多くを語らずに漢字一文字とか三文字とかの手短な言葉の中にいくつもの意味をかけて回答する芸風の持ち主でした。

今回の回答もまた実に彼らしい見事なもので、「相手次第(対一説)」のひと言で天地を覆い尽くし、大波を乗りこなし、激流をピタリと止めて見せています。

「相手次第」というとなんだかフンワリとして聞こえますので色々ツッコミたくなるところですが、実はこれ以上ピタリとくる言葉はないといってよいでしょう。

ある人は「時と場合をよく見極めて適切なことを言う」のが「相手次第」だと考え、またある人は「色々な教えがあるようでも、それらはたった一つの究極の真実から生まれてきている」ことが「相手次第」だと考え、さらには「いや、「相手次第」こそが究極の真実ということでいいのでは?」などと考える人もいますが、これらは全て正しくありません。
いや、正しくないどころか大間違いであって、このレベルの認識に留まっていては地獄に向けてまっしぐらです。

永嘉和尚は「ただガムシャラに苦労すればよいというものではない。たった一つの最重要ポイントをおさえることさえできれば、それで充分なのだ。」と仰ったそうですが実にその通りで、お釈迦さまが一生をかけて教えてくださったことは「相手次第」のひと言に尽きるのです。

「ああ、なるほど!」ということであれば、もう何も申し上げることはありませんので、どうぞご自宅でゆっくりお過ごしください。

「???」ということであれば、申し訳ありませんが、もうしばらく私の話にお付き合いくださいませ。

―――――つづく

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