徳山和尚と潙山和尚 1/5話(出典:碧巌録第四則「徳山挟複子」)

私の師匠である雪竇(せっちょう)和尚は、かつてこんな話をしてくださいました。

「昔、修行中だった徳山和尚が潙山(いさん)和尚の寺にやってきた時の話だ。

徳山和尚は旅装束のままでヅカヅカと潙山和尚が講義をしている部屋に突入するとウロウロ歩き回りつつ辺りを見回して、大きな声で「無い!無い!」と言ってそのまま出ていってしまった。まぁ、なんとも見え透いたやり方だよなぁ。

で、徳山和尚は出口の門まで行ったところで「いやいや、ちょっと待て!」と自分にツッコミを入れると引き返し、今度はちゃんと旅装束も脱いで潙山和尚に挨拶したのだが、話しかけられた潙山和尚が払子を取ろうとしたところ、徳山和尚は大声で一喝し、そのまま出ていってしまった。まぁ、なんとも見え透いたやり方だよなぁ。

翌朝、潙山和尚はリーダー格の弟子に「昨日のアホはどこへ行った?」と尋ねたのだが、リーダーが「アイツはあのまま出て行っちまいましたよ!」と答えると、「そうか、アイツはそのうちアイツなりのやりかたで天下に知られるようになるだろうな。」と言ったとか。まぁ、これも言わずもがなだよなぁ。」

徳山和尚はもともと経典の解説を得意とする人物で、四川省で金剛経の講座を開いていたのですが、南の方で「誰もが生まれつき持っている心が、そのままで仏である」などという邪説が流行していると聞き、「仏になるためにはまず大変な苦労をして悟るための修行を積んで、その上で長い時間をかけて仏としての作法を身につける必要があるというのに何をふざけたことを言っているのか!そんなユルいことをぬかすヤツらはこのオレ様が直接成敗してくれるわ!!」と発奮して、自分で書いた大量の解説書を大八車に積み込むと南に向かって出発したのです。

で、道中お腹が空いたので点心(軽いおやつ)にすべく屋台で揚げ餅を買おうとしたところ、屋台のお婆さんに質問されました。

婆:「オマエさんが引いている大八車に積まれているのは、ありゃいったい何だね?」
徳:「オレ様が執筆した金剛経という難しいお経の解説書だ!」

婆:「ほう、そうかい。確かそのお経には「心は過去にも現在にも未来にも得られない」と書かれているハズじゃが、オマエさんが点じようとしているのは、いったいどの「心」かね?」

屋台の婆さんのまさかのツッコミにぐうの音も出なくなってしまった徳山和尚でしたが、辛うじてひと言を返しました。

徳:「・・・屋台の婆さんとは思えぬ鋭いツッコミだな。いったい誰の入れ知恵だい?」
婆:「ここの近くに龍潭和尚という坊主がおるから、興味があるなら行ってみたらエエよ。」

―――――つづく

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