東西南北 2/3話(出典:碧巌録第九則「趙州東西南北」)

何も考えなければ「山」は「山」ですし「川」は「川」ですが、修業を経て究極の悟りを得たところで「山」が「川」になったりしませんし、「川」が「山」になったりもしません。

だからといって、決して「この世界に特別な事など何もないのだ。のどが渇いたら茶を飲んで、腹がへったらメシを喰う。「究極の悟り」などと言ったところで要はそれだけのことだ。」などと安直に考えてはいけません。

なにごともないように見える平穏無事な状態の裏には、それを支えている順調な気候風土や社会システムがあるのです。

「いい天気」といえば一般的には晴れた状態を指しますが、ずっと晴ればかりで雨が降らなければ、それはもはや旱魃です。

五日に一度は風が吹き、十日に一度は雨が降る。

これが真の「いい天気」であって、平穏「無事」の状態なのです。決して「何もない」のが「無事」ではありません。

「自分とは何か」をとことん突き詰めた先にこそ「無事」があり、その境地に到って初めて「有事」や「無事」に言及しても失敗しなくなります。

なにも考えず、悟ったような気になって成り行き任せの人生を送った挙句、臨終の時に慌てないようにしたいものです。

さて、冒頭のエピソードに戻りますが、土地の名を持ち出して問われ、その土地になぞらえた答えを返す。

一見なんでもないような会話ですが、果たしてこれは「無事」でしょうか? それとも「有事」でしょうか?

またある時、侍者から「王様が来ました!」と声をかけられた趙州和尚は「ようこそいらっしゃいませ!!」と言いました。

侍者が「いや、まだこの部屋まで来られていませんよ!(笑)」と言うと、趙州和尚は「もうひとり王様が来るのか?」と言ったとか。

このエピソードに対し、南禅師はこうコメントしました。

南:「侍者は来客を告げることしか頭になくて、実は自分自身がこの世界における王であることに気づいていない。それに気づかせるためにヨゴレになるのも厭わないなんて、さすがは趙州和尚!」

―――――つづく

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