ダルマが来た意味 ~香林和尚編 2/2話(出典:碧巌録第十七則「香林西来意」)

香林和尚はいつも弟子たちに次のように訓示していました。

「正しい悟りを得るためには、ちゃんとした師匠のもとで修行すべきだ。そしてそのためには、師匠の善し悪しがはっきりと見分けられなければならない。その上で、その師匠の悟りの境地が浅いか深いかを見極められることが肝心だ。

諸君、なにごともまず志ありきだ。修行時代のお釈迦様は、たった一言であっても志を立ててから口を開いていたのだ。それどころか、発言しようという一念を起こすにあたっても志を立てていたのだぞ!」

後になって、僧が香林和尚に訪ねました。

僧:「「部屋の中のひとつの灯り」とは、いったい何のことでしょうか?」
香:「三人が口を揃えれば、カメをスッポンだと言いくるめることなど簡単なことだ。」

僧:「・・・質問を変えます。僧衣の下はいったいどうなっているのでしょうか?」
香:「年末の山焼きだね。」

先にも申し上げたように高名な師匠たちは皆、それぞれの「仏とはなにか?」に対する答えを持っているのですが、「達磨大師はなぜ中国に来たか?」に関しても同じことが言え、実に多様なバリエーションがあります。

ただ、冒頭に挙げた香林和尚の答えだけが、天下の人たちを抑え込んでグウの音も出なくさせるものなのです。

「達磨大師はなぜ中国に来たか?」→「座り続けでお疲れさん」

なんというか味もそっけもない回答で、普通に考えたのではまず意味がわかりません。

よく言われるのが、「これはあれだよ。ダルマさんは中国に来てから九年間も壁に向かって座り続けた人だから、それでもって「お疲れさん」ということなんじゃないかな?」というヤツですが、もちろん全然的はずれです。

雪竇和尚は、このエピソードに対して次のようなポエムを詠みました。

ひとり、ふたり、・・・一千万人!
クツワを外し、荷物をおろしてやったとさ。
左にゴロゴロ、右にゴロゴロ・・・
紫胡和尚は劉鉄磨のバアさんに殴りかかる!

さすがは香林和尚の教えを継ぐ雪竇和尚、なんともズバリとスピーディなご指摘です!

え? 全くワケがわからない? まぁ、普通そうでしょうね。(苦笑)

彼らの手にかかったら、なんの一千万人で済むものですか。世界中の人が皆、束縛から逃れて自由の身になれるのです。

言葉づらだけで右に左に考えているようでは、紫胡和尚に棒で追いかけられても仕方ないと言えましょう。

紫胡和尚は南泉和尚の弟子であり、趙州和尚とも同門でした。

その頃、劉鉄磨という名の尼さんが近所に済んでいたのですが、これがなかなかの傑物で、あちこちの禅寺の坊主どもが問答を挑んでも一度も勝てない有様。

噂を聞いた紫胡和尚はわざわざ劉鉄磨さんのところまで出かけて行って言いました。

紫:「鉄の臼の劉バアさんというのはお前さんかね?」
劉:「いやいや、それほどの者ではないですよ!」

紫:「左にゴロゴロ、右にゴロゴロ・・・」
劉:「いやいや、アンタなにを言い出すのさ?」

紫胡和尚はそこで一喝しながら劉鉄磨さんを叩いたそうです。

僧が「達磨大師はなぜ中国に来たか?」と尋ねたのに対し、香林和尚は「座り続けでお疲れさん」と答えました。

これがもし字面どおりにしか受け止められないというのであれば、それこそ左に右に、言葉に引きずられてしまっているのです。

雪竇和尚はなぜこのようなポエムを詠んだのでしょうか?

答えのわかった人、手を挙げてください。

<ダルマが来た意味 ~香林和尚編 完>

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