三界に法なし 1/3話(出典:碧巌録第三十七則「盤山三界無法」)

ある日のこと、盤山和尚は弟子たちに向かって言いました。

「三界、つまり我々の輪廻転生のステージであるこの世界は「心」によって成り立っているなどと言うヤツがおるが、この世界を構成している地・水・火・風の四大元素の正体は「空」であるというのが我らのお約束じゃ! この世が空である以上、心はおろか仏法であっても三界に拠り所などありはしない。北極星のように動かず、あるがままで、余計なものは一切ない。つまり、「三界に法なし」というわけじゃ!!」

これこそまさに「突然の落雷に素早く耳を塞いでも間に合わない」というヤツですね。なんと身も蓋もないことを言うのでしょうか・・・

盤山和尚は馬祖和尚のところで修行をしたお方ですが、いよいよ臨終だという時になって弟子たちを集め、「誰かワシの肖像画を描いてくれるものはおらんか?」と言いました。

弟子たちは皆それなりに心を込めて師匠の姿を描いて提出したのですが、盤山和尚はどれも気に入らず、弟子たちを罵りだす始末。

その時、弟子の一人である普化が進み出て言いました。

普:「師匠! 私も描けました!!」
盤:「どれ、見せてみろ!」

すると普化はその場でポンと後ろ宙返りを決め、そのまま出ていってしまいました。

それを見た盤山和尚は「なんとシュールな芸風だ・・・ しかし、ヤツは伸びるな。」と言ったとか。

病気を治すためには病因にピタリと合った薬があればよく、手当り次第に大量の薬を飲むことは却って身体によくないと言いますが、「三界に法なし」はまさしく効き目抜群の薬です。

これまでに何度もお話したことですが、禅問答では相手が「何を言ったか」ではなく、「何を言わんとしたのか」を理解しなければなりません。

それも電光石火の明かりの中で見て取るほどの素早さがなければ、たとえ目の前に仏さまが千人出現することがあったとしても気づくことはできないでしょう。

逆に、この辺りの事情をよく理解した人には、盤山和尚の話は単にスベっているだけだということがわかるハズ。

―――――つづく


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