雲門和尚の杖 3/3話(出典:碧巌録第六十則「雲門拄杖子」)

さて、雪竇和尚のポエムは冒頭にあげた雲門和尚の言葉から「ドラゴンに変化」したという部分を省いた簡潔なものとなっていますが、「雪解け水が押し寄せたと言うな」というくだりが追加になっています。

今から四千年以上の昔、毎年春になると大量の雪解け水によって水勢が強まる黄河の上流部分を三段に刻んで氾濫を防いだというのが有名な禹の治水事業であり、この部分の激流を魚が登りきるとそのまま龍と化して雲をつかんで飛び去る、というのがいわゆる「登竜門」の伝説です。

その伝説をふまえた上で、雪竇和尚は「わざわざ龍になる必要はない」と言っているのです。

たまたま龍になることがあったとしても、それは雲をつかむためではなかろう、と。
登りきれずに転落してしまったからといって、そこで意気消沈する必要は全くないのだと。

ここで雪竇和尚が話を一旦切って弟子たちに「わかったか?」と問いかけたのは、いささか妄想チックになり過ぎたところから現実に立ち戻るためであることは言うまでもありませんが、和尚の言う通り、これ以上「ジタバタ」してしまうと元から持っていた杖をなくしてしまいそうだからということでもあります。

さらに雪竇和尚は不甲斐ない私たちを百五十回杖で打つべきところ、七十二回にまけてくださると言うのですが、言葉ヅラしか見ていない人は「百五十の半分は七十五だよね? 計算が間違っているのでは?」などと言う始末・・・

たとえ胸中のわだかまりが全てなくなっていたとしても、七十二回は打たれるべきなのです。

そして、本来はそれでも足りないのです。

当時の私を含め、そのことが理解できた弟子は誰もいませんでしたけどね・・・(苦笑)

<雲門和尚の杖 完>


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