巌頭和尚と天下の名剣 1/2話(出典:碧巌録第六十六則「巌頭什麼処来」)

たちどころに獰猛な虎を罠にかける手並みを見せつけ、ある時は正面から引っ張り上げ、またある時は横から支えながら盗賊を捕まえるための策略をめぐらせる。

明るくても暗くてもピタリと決まり、緩めたり引き締めたりも自由自在。

そんな人なら死んでいるヘビですら使いこなせることでしょう。

・・・いったい私は何の話をしているのでしょうか?

巌頭和尚が修行僧をつかまえて尋ねました。

巌:「どこから来られたのかな?」
僧:「長安からです。」

巌:「長安は黄巣の乱で大変なことになっていると聞くが、オマエさんも黄巣のように天から名剣を得たのかな?」
僧:「得ましたね。」

それを聞いた巌頭和尚は首を差し出すと「ゴトン!」と言いました。

僧が「和尚の首が落ちましたけど・・・」と言うと、巌頭和尚はカラカラと高笑いしました。

その後、その僧は巌頭和尚のところを辞去して雪峰和尚のところに行きました。

雪:「どこから来られたのかな?」
僧:「巌頭和尚のところからです。」

雪峰和尚から巌頭和尚はどんな感じだったか尋ねられた僧が先程のエピソードを話したところ、雪峰和尚はその僧を棒で三十回叩いた上で追い出してしまったとのことです

あちこちの師匠のところを訪ね歩く行脚修行で成果を出そうと思うなら、ちゃんと善し悪しを判断できる眼を持っていなければなりません。

この僧もなかなかのやり手なのですが、巌頭和尚に弱点を見抜かれてグサッとやられてしまいました。

もしこの僧が活かすも殺すも自在の手並みの持ち主であったならやられることはなかったのですが、なんとマヌケにも巌頭和尚にのせられて「得ました」などと言ってしまうという・・・

そんなことではいずれ閻魔大王から「オマエはいったい何をやっとったんじゃ!?」と言われる日が来るでしょう。

かつて竜牙和尚が行脚修行をしていた時、このエピソードを踏まえて徳山和尚に「もしも私が天下の名剣で和尚の首を取ろうとしたらどうされますか?」と尋ねたところ、徳山和尚は首を差し出して「ゴトン!」と言いました。

竜牙和尚が「和尚の首が落ちましたけど・・・」と言うと、徳山和尚は自分の部屋に帰ってしまいました。

後にこの僧は、洞山和尚のところでこの話をしました。

洞:「その時、徳山和尚は何と言ったのかな?」
僧:「いや、特に何も言わなかったですけど?」

洞:「何も言わなかったことはまぁいい。ところでワシに落ちた徳山和尚の首を貸してはくれまいか?」

それを聞いた竜牙和尚は全てを理解し、徳山和尚のいる方角に向かってお香を焚き、頭を下げて懺悔したということです。

その話を伝え聞いた徳山和尚は「洞山のオッサンめ、善いことと悪いことの区別がついておらんな。アイツは死んでからもうだいぶ経つのだ。いまさら助けてどうしようというのか!」と言ったとか。

―――――つづく


☆     ☆     ☆     ☆

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