人を生かしも殺しもする絶妙な切れ味の宝剣は、あそこにもあればここにもあります。
もちろん、今この瞬間だって貴方の眼の前に突きつけられたままになっています。
敢えてとりあげて問題視するもよし、放っておくもよし。
さて、客でも主人でもなく、客でも主人でもある。
今回はそんなケースについてお話させていただきましょう。
とある僧が定州和尚のところから烏臼(うきゅう)和尚のところにやってきました。
烏臼:「定州和尚のところはどんな感じだね?」
僧:「いや、特にこちらと違いはないですね。」
それを聞いた烏臼和尚は「違わないなら元いたところに帰れや!!」と怒鳴りつけて、僧を棒で叩きました。
僧:「・・・いやいや、棒だって善し悪しを理解できます。やたらと人を叩いてはダメですよ!」
それを聞いた烏臼和尚は「おっと、今日のヤツはなかなか打ちごたえがあるな。」と言って、僧をさらに三度叩きました。
そのまま出ていこうとする僧に烏臼和尚が声をかけます。
烏臼:「なんと、何も悪くないのに泣き寝入りするヤツがおるぞ!(笑)」
それを聞いた僧は振り返って言いました。
僧:「臼を挽くための棒は和尚の手の内ですからね。」
烏臼:「欲しいならオマエに渡すぞ!」
それを聞いた僧は、烏臼和尚から棒をひったくると和尚を三度叩きました。
烏臼:「何も悪くないのに! 何も悪くないのに!!」
僧:「泣き寝入りするヤツがおりますなぁ。(笑)」
烏臼:「やたらと人を叩くのではなかったわい・・・」
それを聞いた僧が自分に向かって礼拝したのを見た烏臼和尚が「なるほど、そうくるか!」と言うと、僧は大笑いしながら出ていきました。
それを見送りながら、烏臼和尚は「ふむ、なかなかどうして、たいしたもんだ!」と言ったとか。
―――――つづく
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