歴代の師匠と柱 1/2話(出典:碧巌録第八十三則「雲門露柱相交」)

ある時、雲門和尚は御堂の柱を指差しながら弟子たちに尋ねました。

「歴代の師匠たちは、そこの柱とツーカーの仲だ! さて、これは仏の何番目のハタラキになるのかな?」

弟子たちは誰も答えられなかったので、自分で次のように答えたそうです。

「南の山にムクムクと雲が起これば、北の山にザーザーと雨が降るのだ!」

雲門和尚は常時千人以上の弟子を抱える超売れっ子の師匠で、その門下からは八十人もの売れっ子を輩出しました。

亡くなって七十年以上経ってから墓を開いてみたところ、なんと生前と同じ姿のままであったそうです。

知識は確かで幅広く、反応速度は電光石火の素早さ。訓示も応答もコメントも、全てが高いレベルで安定していたといいます。

私の同僚で蔵主(ぞうす:経文が記された書物を管理する係)を務めている慶さんは、この問答について「こんな話はどのお経にも出てこない!」といって感心することしきりでした。

それに比べて今どきの人たちは皆、ものごとを理屈で考えようとしますので、「生きている人間であれば誰かとツーカーというのはわかるけど、もう亡くなってしまっている歴代の師匠たちが今さら何かとツーカーになるというのはわからないなぁ。そもそもなんで相手が柱なの!?」などと言ったりします。

挙げ句に「雲門和尚は質問を無視して、でまかせの歌を歌っただけなんじゃないの?」などと言い出す始末・・・

これまで繰り返し申し上げてきましたが、禅の達人というものは口を開けば一切の誤りもムダもなく瞬時に究極の真実を示すものです。

世間のどんな評価も評判も、主観と客観を一致させて表裏一体となった彼らには通じません。

かつて私が師事した五祖法演和尚は、このエピソードに対して次のようにコメントしました。

「なんと雲門和尚ともあろうものが肝っ玉の小さいことよ! ワシなら躊躇せずに「八番目のハタラキだ!」と言ってやるところだが。」

ちなみに雲門和尚が「歴代の師匠たちは、そこの柱とツーカーの仲だ。これは仏の何番目のハタラキになるのか?」と質問を投げかけた時、弟子たちの前でしばらく何かを包んで見せる仕草をしていたのだそうです。

弟子の一人が「すみませんが全然わかりません。いったい何のお話ですか?」と訪ねたところ、「三十文払うから荷ヒモを持ってきてくれ!」と言ったとか。

結局弟子たちは誰も答えられなかったので、自分で「南の山に雲が起これば、北の山に雨が降る」と言いましたが、これは後世の人のためにヒントを出しているのです。

―――――つづく


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