玄沙和尚の三病人 1/3話(出典:碧巌録第八十八則「玄沙接物利生」)

まず固定観念を打ち砕く。
それが禅の達人が初心者を導くやり方です。

そして話が深まったら、そこで存分に大暴れできるようでなければいけません。

相手が抱える心の闇をしっかりとつかみ、厳重にかけられたカギや鎖を撃破して涼しい顔をしてみせる。

今回もまた、そんな人の話をさせていただきましょう。

玄沙和尚は言いました。

「昔も今も、偉い坊さんたちはみな口をそろえてこう言ったもんだ。『相手を見て、うまいことやれよ』とな。

例えばだ。
もしこんな三種類の病人が来たとしたら、いったいどうしたらよいのだろうか?

目が見えない相手が来たとする。何しろ目が見えないのだから、お得意のゼスチャーは全く通じない。

耳が聞こえない相手が来たとする。あれこれと言い立てたところで、聞こえていないのだから全く通じない。

口がきけない相手が来たとする。話すことができないのだから、その理解の度合いを確認することができない。

さてさて、君たちならそんな相手が来た時、どうやって対応するかね?

できません、などと言うのであれば、仏教なんて何の役にも立ちやしません、と白状しているようなもんだぜ!」

それを聞いた一人の修行僧が雲門和尚に質問しようとしました。

雲門和尚は言いました。

「キミ、まずお辞儀をしなさい」

修行僧が立ち上がって頭を下げようとした途端、雲門和尚は杖を構えて猛然と突き出しました。

思わず飛びのいて身をかわす修行僧。

それを見て雲門和尚は言いました。

「ふむ、お前さん、目は見えているようじゃな」

雲門和尚はさらに言いました。

「そんなところにいないで、もっと近くに来なさい」

修行僧が恐る恐る近づいていくと、雲門和尚は言いました。

「ふむ、お前さん、耳も聞こえておるようじゃな」

雲門和尚はさらに言いました。

「ホレ、お前さん、わかったかな?」

修行僧は答えました。

「……いいえ、全くわかりません」

雲門和尚は言いました。

「ほう、お前さん、ちゃんと口もきけるというわけじゃ」

ここで修行僧は、ハッと気づいたそうです。

―――――つづく


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