希陵和尚による後書き(1317年)(出典:碧巌録「後序 比丘希陵」)

圜悟和尚は雪竇和尚の「ポエム百選」を詳細に解説されました。

彼はそれを通じて言葉では表せないハズの歴代の師匠たちの心の動きまで生き生きと描き出し、後世の修行者たちに究極の悟りへの心構えというものを示してみせたのです。

それはあたかも太陽が燦然と輝いて真理に至る洞窟の入口を照らし出したり、冴えわたる月光が薄暗い部屋の中にあるものをクッキリと浮かび上がらせたりするようなもの。

その神秘的とすら呼べる偉大なハタラキは、生半可な知識や経験の遠く及ばないものなのです。

その後、人生に関する諸問題に対する学生たちのコメントが妙に秀逸なのを疑問に思った大慧和尚がちょっと強めのツッコミを入れてみたところ、たちまちにしてメッキがはげ落ち、さらに追及したところ「申し訳ありません。自分の頭で考えたのではなく『碧巌録』を受け売りしただけなのです・・・」などと白状する事件が起こりました。

大慧和尚は学生たちが奥深いところに目を向けず、表面的なことばかりにとらわれている状況を憂慮して、碧巌録を焼き捨てたという訳です。

とはいえ、碧巌録を制作するのと焚書にするのと、やり方は真逆ではありますが、その心はひとつなのです。

編集者の張煒さんは偶然「碧巌録」の写本の後半部分を入手し、その後、雪堂書店バージョンと蜀で流通していたバージョンも入手して、照合して誤りと思われる部分は修正し、完全版として復刊させました。

智慧のある人が読めばたちどころに迷いが晴れるこの書物の復刊は、偉大な事業と言ってよいでしょう。

延祐丁巳年(1317年)迎仏会の日 径山の住職 希陵 謹んで後書きを記す

<希陵和尚による後書き(1317年) 完>


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