別訳【夢中問答集】第四問 どうせ欲張るなら

足利直義:いやいや和尚、そりゃ「欲」をなくすことができるなら全てが満足するに決まっていますよ。「足りない」と思う気持ちこそが「欲」の正体なのですから。

それに理論上は確かにそうでしょうけれども、そんなことできる人、ほとんどいないんじゃないですかね?

夢窓国師:いやいや、そんなことはないぞ。おまえさんたちが常々「もうかりたい!」と願い続けているのと同じような剣幕で、「欲をなくしたい!」と願い続けてみろ! そんなに難しいことではないハズじゃから。

とはいっても、「欲を捨てればガッツリもうけられるんだ!」などと考えてやるのではダメだぞ?  それではあれこれと金儲けの算段をめぐらせるのと違いがなくなってしまうからな。

まぁ、確かに「欲」を捨てるということは一筋縄ではいかないかも知れん。

自己救済を目的とする修行者たちは、世間一般的な「欲」はすべて消滅させているのじゃが、それでもまだ「悩みのない世界へ行きたい!」という欲望が消せていない。

「他者救済」の悲願を起こした「菩薩」と呼ばれる超人たちですら、まだ「真実究極の法」に対する執着が残っている。

もし、「世間一般的な欲望」と「超世間的な欲望」のどちらも一時に滅ぼすことができたなら、人間が本来持っている潜在能力を100%発揮することができるようになるハズじゃ!

そしてその能力を発揮することで得られる莫大な利益は、自分はもちろん、世界中の人すべてに大盤振る舞いしたところで全く減ることはないのじゃ。

これこそまさに、「究極のウハウハ状態」じゃ! そうなってみたいとは思わんか?

どうしても「欲」が捨てられないというのであれば、せめてそのぐらいの「でっかい欲」を持とうとせんか、バカモノ!

この「究極の欲望」を起こした人にとっては、俗世間のわずらわしさを捨てた人たちや、修行によって超能力を得た人たちのことですら、なんにもうらやましくなんかないのじゃ。ましてや、「金持ちになりたい」とか「パラダイスに生まれ変わりたい」などという欲望は、ちっぽけ過ぎて考えることもアホらしく思えることじゃろう。

<第四問 どうせ欲張るなら 完>


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