鉄の牛 6/7話(出典:碧巌録第三十八則「風穴鉄牛機」)

風穴和尚は臨済和尚の弟子筋です。

かつて臨済和尚が師匠の黄檗和尚のもとで修行していた時のこと、臨済和尚が寺の敷地内に松を植えているのを見た黄檗和尚が呼びかけました。

檗:「こんな山奥にそんなにたくさんの松なんか植えていったいどうするつもりなんじゃ?」
済:「この辺りは殺風景だから賑やかしにでもなればと思いましてね。
あとから来る人たちの道しるべにもなって便利ですよ!」
檗:「なるほどそれはそうなんじゃが、ワシは既にオマエを20発叩き終わっているぞ?」

それを聞いた臨済和尚は手にした鍬で地面を一撃して、ノドの奥から「コオォーッ」と声にならない声を出しました。

で、黄檗和尚は直ちに、「ウム、ワシの芸風はオマエの時代に大ブレイクすること間違いなしじゃ!」と満足げに言ったとか。

この話を聞いた潙山和尚は言いました。

潙:「いやはや、臨済和尚のやりくちときたら、まるで何でもない平地で急につまづいて倒れるようなもんだね!
しかしまぁ、緊急事態の中でもいつも通りに平然とやれてこそ真の漢(オトコ)だとも言うか・・・
それにしても、あのキビシイことで知られた師匠の黄檗和尚がこんなに手放しで弟子を褒めるのも珍しい。これじゃただの「親バカ」じゃないか。(苦笑)」

また、ある時、潙山和尚は予言能力があることで有名な弟子の仰山和尚に尋ねました。

潙:「黄檗和尚の芸風って、結局のところ臨済和尚がピークということになるのかな?」
仰:「いや、もうちょっと後の時代にもうひと山ありますよ。ただ、だいぶ先のことになるので、今はあまり言いたくないです。」

潙:「まぁそう言わずに教えてくれよ。いったいそれはどんなヤツなんだい?」
仰:「一人の漢が南を目指し、大風に吹かれて止まります。」

仰山和尚の予言を、この時はまだ誰も理解できませんでしたが、思えばこれは風穴和尚の出現を予言していたのですね。


―――――つづく

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