今から1,100年ぐらい昔の中国で泉州の知事を務めていた王大傳は、心酔する長慶和尚のためにお寺を建ててしまったほどの熱心な仏教ファンでした。
ある時、王大傳がその寺を訪問すると、長慶和尚の弟子の朗上座と明招和尚がお茶を淹れているところに出くわしました。
朗上座の手が滑って明招和尚に渡そうとした急須をひっくり返してしまったのを見た王大傳は、すかさずツッコミました。
王:「おっと、茶炉にお茶を奉納するとは! さては茶炉の下に何かありがたいものでもあるんですかね?」
朗:「ああ、茶炉を支えてくださるありがたい炉神様がいらっしゃるのだ。」
王:「茶炉を支えてくださる神様にお茶をぶっかけてどうしようというのですか?」
朗:「永年勤続で得た信用も、一回の失敗でふいになるということだよ。」
それを聞いた王大傳は、サッと振り向くと帰っていってしましました。
それを見ていた明招和尚と朗上座の会話は以下のとおりです。
招:「朗さんよ、長慶和尚のところで修行して得たチカラをキャンプファイヤーなんかに浪費してどうするんだい?」
朗:「いやいや・・・ そういう和尚はどうなんですか?」
招:「スキだらけだから炉神様につけこまれたように、ワシには思えるな。」
雪竇(せっちょう)和尚はこの話をとりあげた後、こうツッコミを入れました。
「ワシならその場で茶炉ごと蹴り倒してやるところだな。(笑)」
さらに大潙和尚は次のようにコメントしました。
「王さんもまた随分と大きな見得をきったもんだ。明招和尚は才気煥発なお方なので黙っていられなかったのだろうけど、ちょっとスベった感は否めないよなぁ。(苦笑)
もしワシが朗上座なら、急須をちゃんと置き直し、大爆笑しながら王大傳の後ろ姿を見送るところなんだが。」
―――――つづく
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