南泉和尚のネコ殺し 2/2話 (出典:碧巌録第六十三則「南泉両堂争猫」)

世の中には、そもそも理屈で考えようとしてはいけない類の話というものがあります。
冒頭のエピソードもやはりそうでして、これを理屈で考えようなどというのは南泉和尚に対して失礼にあたります。
ただ全身全霊をもってブチあたるのでなければいけません。

そこには「有」でよく「無」でもよく、「有」と「無」のどちらでもなくてもよい世界があります。

昔からよく言うではありませんか。
「窮すればすなわち変じ、変ずればすなわち通ず」と。

今の人はこの「変」ができないものだから「通」もありません。
ただひたすらに文字づらを追ってああだこうだと言うばかり。

南泉和尚があの場で問題提起した時、彼は決して弟子たちに何か気の利いた言葉を教えようとしたのではないのです。

ただ、それぞれがそれぞれのこととして受け止め、それぞれのこととして実行し、それぞれのこととして自覚して欲しかっただけ。

そうでなければ「真実」なんて永遠に理解できっこありませんよね。

雪竇和尚はこのエピソードを我々に示した上で、直ちに次のようなポエムを詠まれました。

西と東のデタラメ坊主、ケムリを巻き上げ大騒動。
南泉和尚がやりすぎを恐れずに伝家の宝刀で真っ二つにしてくださったからよかったものの・・・

流石は南泉和尚と同じ景色を見ている雪竇和尚、ズバリひとこと決めてしまわれましたね!

確かに当時、東西両堂の坊主どもは着地点を見失ってグダグダになっていました。
そこへ南泉和尚がやってきて、やりすぎの非難を覚悟で伝家の宝刀を揮ったという次第。

さて、ここで読者の皆さんに質問です。

この「伝家の宝刀」とはいったい何のことだか、皆さんちゃんと理解されていますでしょうか?

もし”NO”ということであれば、旅の途中で陽が暮れて、このまま進んでも家に帰り着けず、引き返しても宿に戻れないのと同じ状況ですよ!

ご用心、ご用心・・・

<南泉和尚のネコ殺し 完>

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