オレ様が善か悪かなど、いかなる聖人にも理解できまい。
オレ様が行く先が前か後ろか右か左かなど、仏にだってわかるまい。
薄氷や刃の上を素足で走り抜けるオレ様は、そう、まるで燃えさかる火炎の中に咲く蓮華のように奇跡的な超人だ!
・・・どうせ道連れにするなら、そんな人と行きたいものですね。
さて、私はいったい何の話をしているのでしょうか?
ある時、趙州和尚が後輩の投子和尚に訪ねました。
「なぁオマエ、完全に死にきった人の方が、そうでない人よりもむしろイキイキしているんだがどうしてだろうね?」
投子和尚は答えました。
「たとえ夜間外出禁止だったとしても、夜が明けたときには到着していなければなりませんからね。」
・・・まるで孔のない笛、布製のカスタネットのような意味不明さですね。
これはまぁ、この二人だから成立する会話です。
同じ布団で寝てみなければ布団の内側が破けていることはわからないものです。
ドロボウはひと目見ただけで他のドロボウを見抜けるといいますが、まぁ、そんな感じでしょうか。
こんな意味不明にも程のある問答ですが、昔から皆に「素晴らしい!」と絶賛されてきました。
この二人はそれぞれ別の師匠についていたのですが、互いに投げた槍の先端が空中でピタリと突き合うかのような息の合ったところを見せていますよね。
ある日、投子和尚主催のお茶会で投子和尚が自ら趙州和尚にフカフカの蒸しパンを直接手渡そうとしたところ受け取ってもらえず、醗酵させてから焼き上げた餅を侍者を通じて渡したところ趙州和尚は侍者にうやうやしく三度お辞儀をしたとか。
さぁ困った! いよいよワケがわからない。(苦笑)
これは趙州和尚が如何に相手のために誠心誠意をもってあたるお方であったかを示すエピソードなのですが・・・
投子和尚ととある僧侶の問答をご紹介します。
僧:「真実の「道」とはいったいどんなものなのでしょうか?」
投:「道!」
僧:「いや、それはそうなのですが・・・ では、「仏」とはいったいどんなものなのでしょうか?」
投:「仏!」
僧:「・・・質問を変えます。「金の鎖がまだ解けていない」とはいったいどんな状態なのでしょうか?」
投:「解けた!」
僧:「「金のニワトリがまだ鳴いていない」とはいったいどんな状態なのでしょうか!?」
投:「静かなもんだ!」
僧:「では、「鳴いた後」はどうなのでしょうか!?」
投:「皆それぞれに時を知るのだ!!」
・・・投子和尚の会話はいつもこんな感じだったとか。
―――――つづく
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