このエピソードに関し、私の師匠の雪竇和尚は次のようなポエムを詠みました。
「網を抜け出した金魚」がいつまでも水の中にいるわけがない。タテガミを振れば天は揺れ動き、シッポを振れば地面が揺れ動く。千尺(約300m)のクジラが潮を吹けば、大音響とともにつむじ風が巻き起こる。・・・つむじ風に気づく人はなかなかいないのだけれどもね。
法演和尚は「雪竇くんの文才にはいつも感心させられておるのじゃが、この「「網を抜け出した金魚」がいつまでも水の中にいるわけがない。」というのは実にエエな! この一句で全てを言い尽くしておる!!」とよく言っておられましたっけ。
確かに「金のウロコをもち、厳重に仕掛けられた網を抜け出してくるような魚」がいつまでも他の魚と一緒に水の中にとどまっているわけなどあるわけなくて、それはもう万丈の波頭の先を飛んでいるのに違いありません。
さて、そんな魚にはどんなエサがふさわしいのでしょうか?
もし読者の皆さんがそれをお知りになりたいというのであれば、ひとり静かに考えてみることをオススメします。
「千尺のクジラが潮を吹く」とは、三聖和尚が「1500人も弟子がいる大先生のくせに、まともに問答もできねぇのか!」と言ったことを表現しています。
また、「大音響とともにつむじ風が巻き起こる」とは、雪峰和尚が「忙しくてそれどころではない!」と言ったことを表現しています。
要するにこの二人の師匠の大力量ぶりを讃えているわけですね。
ところで末尾の「つむじ風に気づく人はなかなかいない」はどう考えたものでしょうか?
地上でつむじ風が巻き起これば普通はみな気づくと思いますけれども。
ふむ、これはひとつ、読者の皆さんへの宿題としておきましょう。
ひとり静かにお考えいただければ、必ずや各々の力量に応じた答えを得られるハズですので。
<金魚のエサ 完>
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