さて、百丈和尚は一緒にいた弟子たちに「なぁオマエたち、クチをふさがれた状態でモノを言うにはどうしたらよいと思う?」と尋ねたところ、雲巌和尚は「師匠・・・ケチケチしないで教えてくださいよ!」と返し、百丈和尚は「だからそれじゃ修行にならんと言っておるだろう!」と言ったとか。
雲巌和尚は百丈和尚のところで二十年も侍者を務めていた人です。
ある日、同僚の道吾和尚と一緒に薬山和尚を訪ねたところ、薬山和尚から「おいオマエさん、百丈和尚のところで修行して、これまでにいったいどんな成果を得られたのかな?」と尋ねられ、雲巌和尚は「いやぁ、何て言うんですかね。「生死を超越できた」っていう感じですか。」と答えました。
すると薬山和尚が「ホウ、誰が「生死を超越した」って?」とツッコミを入れてきたので、雲巌和尚は「絶対的自我に「生死」などないのです!」とドヤ顔で答えたところ、薬山和尚に「なんや、二十年も百丈和尚のところにいて、未だにその程度かいな・・・」と呆れられてしまったとか。
で、それから南泉和尚のところに行って、また薬山和尚のところに返ってきて、そこでようやく悟りを得られたという次第。
昔の人たちは今どきの人たちと違って極めてマジメに修行する人ばかりだったのですが、それでも二十年修行してヒヨッコというか青二才というか、全然「イケてない」認定されてしまう有様・・・
もう陽が落ちて暗闇が迫っているというのに宿にたどり着けず、かといって引き返しても家には帰りつけないという何とも中途半端な状態と言ってもよいかも知れません。
かつて雲峰和尚は言いました。
「言葉を型通りにしか使えないというのでは、いつまでたっても煩悩のフタの下から出ることはかなわない。ちょうど山の谷間に漂う霧が、川の源を隠してしまうようにな!」
克符和尚も言いました。
「イバラの林を抜けて出てこいや! 出てこられないのであれば、オマエは一生、枝葉末節の奴隷だ!!」
雲巌和尚はあちこちの師匠たちを訪ね歩いては芸風の違いを楽しんでいたのですが、百丈和尚に捕まって、一撃で叩きのめされてしまったというわけですね。(笑)
雪竇和尚は、このエピソードに関して次のようなポエムをよみました。
「ケチケチしないで教えてくださいよ!」なんて、まるで油断しきったライオンみたい!
あまりのイケてなさに、百丈和尚も思わずタメ息・・・
ライオンは言わずと知れた「百獣の王」ですが、どんなに小さくて弱そうなエモノであってもキバを隠しツメを引っ込め、戦闘態勢を整えて、全力で攻撃するのだとか。
確かに「ケチケチしないで教えてくださいよ!」には、その感じはないですよね。
私も百丈和尚にタメ息をつかれないよう、せいぜい頑張るとしましょうか。(苦笑)
<続々 クチを使わずにモノを言う方法 完>
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