なにか素晴らしいこと 1/2話(出典:碧巌録第二十六則「百丈奇特事」)

とある僧が百丈和尚に尋ねました。

僧:「なにかこう、特別で素晴らしいことはありませんかね?」
丈:「ワシはこうやって一人で座っておるぞ!」

それを聞いた僧が礼拝すると、百丈和尚はすかさず棒で叩いたそうです。

この僧は、百丈和尚の芸風をよく理解した上で、敢えてトラのヒゲをひっぱるようなマネをしたわけですが、百丈和尚もこの僧がそこそこ修行のできた人物であることを見抜き、質問に秘められた真意に対して真摯に回答したわけです。

で、礼拝した僧を百丈和尚は叩きましたが、僧に何か落ち度があったのでしょうか?
もし落ち度などないというのであれば、なぜ百丈和尚は叩く必要があったのでしょうか?

この僧はトラのヒゲを引っ張るだけの勇気と、的外れとも思える回答に秘められた思いやりに気づけるだけのスキルを持っていたので礼拝したのだと思いますが、少しだけ対応がズレていたのかも知れません。

南泉和尚はかつてこう仰いました。

「昨日の夜更けに文殊菩薩と普賢菩薩がワシの枕元で仏法談義を始めやがったので、二人ともボコボコにぶん殴ってこの世の果てまで追っ払ってやったぜ!!」

するとそれを聞いていた弟子たちの中から趙州和尚が進み出て言いました。

「和尚! 誰をボコボコにしたんですって?」

南泉和尚は仰いました。

「ワシゃなにも悪くないぞ!!」

それを聞いた趙州和尚は礼拝をしたそうです。

禅のエキスパートたちはいつも油断することなくツッコミを入れる機会を狙っています。
で、ここぞというタイミングを見つけると、イキイキとツッコむわけです。

法演和尚は、瞬時に正しく対応しないと大ケガをするという意味で、これを「馬前の相撲」と表現しておられました。

「考えるんじゃない、感じるんだ! しっかりとつかまえてブチのめせ!! その時オマエは百丈和尚を見るだろう。」、とも仰っていましたっけ。

―――――つづく

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