この僧はまた、「どれほど乱暴な言葉も、どんなに優しい言葉も、みな全て究極の真実の表現である」と書かれているが、本当か?」とも尋ねています。
そしてマジメな投子和尚は答えます。「本当だよ。」、と。
質問を変えたのに前と全く同じ答えをされ、この僧は思わずブチ切れて「和尚のことを「ロバ」と呼んでもよいか?」と言わされてしまいます。
で、投子和尚にもう一度叩かれてしまうわけなのですが、返す返すもここは実に惜しいところです。世間一般の師匠レベルであれば、どれほど高いところでふんぞり返っていたところで、これだけ言われてしまったらグウの音もでないところなのですから。
かつて巌頭和尚は「もしもディベートをふっかけてくるようなヤツが現れたなら、オレ様はすかさず進行役に徹する!」と言いました。
実は投子和尚のヤリクチも同じなのですが、彼の場合、議論をフンワリ受け止めた上でいきなり収束させてくるので、皆なすすべもなくやられてしまうのです。
この僧がもし、ここで和尚に二度叩かれても挫けずに攻め続けることができたなら、彼の名は後世にまで残ったハズ。
惜しい、実に惜しい!
我ら禅宗坊主は「やりきれないなら最初からやらない。やるならば徹底的にやる」のが信条だというのに・・・
―――――つづく
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