西院和尚は若いころ大覚和尚のところで修行していましたが、後に宝寿和尚に師事してその跡を継ぎました。
ある時、ヤング西院和尚は宝寿和尚に質問しました。
西:「もし私が、例のインチキなハリボテの城を蹴倒して向かってきたとしたなら、アンタどうします!?」
宝:「ワシの「伝説の宝刀」は死人を斬るためのものではないんじゃがのぅ・・・」
西:「バッサリ!!」
それを聞いた宝寿和尚がヤング西院和尚を杖で打ち据えると、ヤング西院和尚は再び「バッサリ!!」と言いました。
改めて宝寿和尚が杖で打つと、また「バッサリ!!」と言います。
結局ヤング西院和尚は10回打たれても、そのたびに「バッサリ!!」と言い続けたそうです。
宝寿和尚はヤング西院和尚を10回打ち終わると言いました。
宝:「オマエ、気は確かか!? ・・・全く、いったい何をそんなにムキになっておるのじゃ!」
そして遂にヤング西院和尚を追い出してしまったとのこと。
さらに、一部始終を横で見ていた僧が「和尚! 今の若者はなかなか見どころがありそうじゃないですか。もうちょっとキチンと指導してあげたらいかがです?」と言うと、宝寿和尚はその僧も杖で打って追い出してしまったとか・・・
さて、賢明なる読者の皆さん、ヤング西院和尚はともかく、横から意見した僧まで追い出したのは何故だと思われますでしょうか?
自分が批判されたと思ったからでしょうか? それともその逆でしょうか?
結局その後、西院和尚は宝寿和尚の跡を継ぎました。
ある日のこと、西院和尚は南院和尚のところを尋ねました。
南:「やぁ、ようこそいらっしゃいました! ・・・ちなみにどちらからお越しでしょうか?」
西:「許州(現在の河南省)から来ました。」
南:「なにか手土産を持ってこられましたかな?」
西:「江西名物「めっちゃキレキレの剃刀」をお持ちしました。ぜひ、和尚にさしあげたく。」
南:「許州から来られたのに、何でまた江西の名物を持ってこられたのですかな?」
西院和尚はいきなり南院和尚の手を引き寄せて思いっきりつねりあげ、「確かにお渡ししましたぞ!!」と言うなりクルリと振り向いて帰っていってしまいました。
残された南院和尚は呆気に取られて「なんと!・・・ なんと!・・・」と感嘆の声をあげたとか。
―――――つづく
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