病気と薬 2/2話(出典:碧巌録第八十七則「雲門薬病相治」)

ある時、文殊菩薩に「何でもよいから薬にならないものを持ってきなさい」と命じられた善財童子(注:華厳経入法界品の主人公。古代インドの大富豪の息子)は、世界中をくまなく探しましたが、何の薬にもならないものなどひとつも見つかりませんでした。

仕方なく文殊菩薩のところに戻ってきた善財童子が「この世に薬にならないものなどありませんでした。」と報告すると、文殊菩薩は「それでは、何でもよいから薬になるものを持ってきなさい。」と命じました。

善財童子がその場に生えている草を一本むしって文殊菩薩に渡すと、文殊菩薩はそれを高く掲げて皆に示しながら、「これだ! この薬こそが人を殺し、そして人を活かすのだ!!」と宣言したとのことです。

この「病気には薬が必要」の話は、実は公案としては最も難解な部類に属します。

かつて雲門和尚と長老格の弟子である金鵝和尚が「病気には薬が必要」について夜通し議論したことがあったのですが、夜が完全に明けてしまうまでそれらしい結論が得られなかったそうな。

それについて雪竇和尚は、以下の様にコメントしました。

「病気には薬が必要」の公案は最難関だ。ぶっとい鎖が何重にもグルグル巻きになっていて、どこから手を付けたらよいかもわからない。
金鵝和尚が挑戦したことがあったが、現存する学説を全て出し切ってようやくなんとかなったとか。

この世にあるもの全てが薬。
・・・よくもまぁ、今も昔も飽きずに間違い続けたもんだ。

雲門和尚はこう仰った。
「もしこの杖が波ならば、オマエはもう自由自在だ!
もしこの世の全てが波ならば、オマエはもう波間で揉まれてアップアップだ!!」

ひとつオマエさんにヒントをやろう。
実際に走らせる道路を見もせずに、部屋に閉じこもって車を作ってどうする?
まぐれで道幅に合った車ができることもあるかも知れんが、まぁ、普通はうまくはいかん。
ワシならそんなことはしない。門をしっかり閉じて、そもそも車なんか作らない。
それでも門から一歩外に出たならば、何ものにも遮られずに自由に進むことができる。
・・・いや、ちがう、そうじゃない。(苦笑)

雪竇和尚はわりと上から目線で思わせぶりをやろうとしたのですが、どうやらボロが出てしまったようですね。

さて賢明なる読者の皆さん、
いったい何が「ちがう、そうじゃない」のでしょうか?

まぁ、まずは今から三十年修行を積んでみることですね。

その上で貴方が「杖」を手に入れたなら、私は貴方に「杖」をさしあげましょう。

もし貴方が「杖」を手に入れられなかったなら、貴方は他人に鼻づらを引き回されても文句は言えませんぞ。

<病気と薬 完>

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