全身が眼 3/5話(出典:碧巌録第八十九則「雲巌問道吾手眼」)

その点、雪竇和尚はこの道の達人ですので、仕掛けられたワナどころか仕掛けた人たちの頭上を飛び越えていくコメントをされました。

「身体中」か、「全身」か、それが問題だ。
同じようだが、取り上げてみれば四十万キロメートル近くも離れている。
(訳注:地球と月の距離は、一番離れている時で約四十万キロメートル)
伝説の巨鳥が翼を広げて成層圏まで羽ばたくと、地球上の全ての海水は大きく波打つ。
・・・だというのに、なぜホコリが一向に収まらないのか?
オマエは帝釈天の宮殿を飾る網に連なる無数の宝珠が、お互いを映し合って荘重な像を結んでいるのを見たことがないのか?
杖の先にある眼のついた手が、いったいどこから来るのかわかるか?
オラオラッ!!

「身体中か、全身か」、あるいは「寝ながら手探りで枕の位置を直すのか、身体中を手でまさぐるのか」、などということを考えているようではまるでダメです。

言ってしまえば、実は「身体中」も「全身」も、どちらも間違いなのですから。

この話を一般的な常識や観念で推しはかろうとした途端、答えはまさに四十万キロメートルの彼方まで遠ざかります。

伝説の巨鳥である鳳凰(ガルーダ)は龍(ドラゴン)を主食としており、空中で龍を見つけると、あっという間に捕食してしまいます。

龍は必死に鳳凰に巻きついて自らの土俵とする海中に引きずりこもうとするのですが、鳳凰は大概その手は食わず、龍を一旦手放します。

これ幸いとばかりに龍は海中深くにその身を隠すのですが、鳳凰がその羽をひと打ちすると、海は一気に底まで割れて龍が露出し、結局喰われてしまうのだとか。

なんとも物凄いスケールの大きな話ですが、千手観音の手眼から見れば、ただ小さなホコリが舞い上がってなかなか収まらないだけのことなのです。

―――――つづく

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