雪竇和尚は言いました。
「身体中を手探りして「これが手眼だ!」などと考えているようではまるでダメだ! 千手観音の脈絡を見失ってしまっていて、何の役にも立ちやしない・・・」、と。
だからこそ、「なぜホコリが一向に収まらないのか?」ということになるわけです。
恐らく雪竇和尚はここで「ビシッと決めてやった!」と思われたのでしょうが、そのすぐ後で「帝釈天の宮殿を飾る網に連なる無数の宝珠が、お互いを映し合って荘重な像を結んでいるのを見たことがないのか?」などと言ってしまった時点でボロが出てしまいました。
華厳宗ではあらゆる存在領域=法界を四つに分類しています。
ひとつ目は「理法界」というもので、全宇宙の「真理」が入ります。
「多種多様な現象の全ては同一の原理に基づくが故に平等である」ことを表しています。
ふたつ目は「事法界」というもので、全宇宙の「事象」が入ります。
「究極の原理から多種多様な現象が現れてくる」ことを表しています。
みっつ目は「理事無礙法界」。
これは「真理と事象が妨げなく交流・融合する」ことを意味しており、あらゆる物事は固定されていないことを表しています。
よっつ目は「事事無礙法界」。
「事象と事象が妨げなく交流・融合する」ことを意味しており、「一事が万事」であり、また「万事が一事」であることを表しています。
これらを踏まえると、「ひと粒のホコリが舞い上がっただけで、直ちに大地が収まる」ということになります。
またその「ひと粒の小さなホコリ」の中に、上記の法界が存在しているのです。
そして、実際にはその「ひと粒の小さなホコリ」が無数にあるわけで、そのそれぞれの中に無限の法界を含む・・・ なんというか、目もくらむような話ですね。
―――――つづく
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