究極の真実を見極めてブッダと同じ視界を手に入れるためには、あれこれと余計なことを考えることを止め、妙なこだわりも捨てて、あらゆることがらに自由自在に対応しながらも心はいつも澄み切っている、という境地を獲得しなければなりません。
さて、私はいったい何の話をしているのでしょうか?
以下、塩官和尚と侍者の会話です。
塩:「おーい、サイの角で作った団扇を持ってきてくれないか?」
侍:「・・・サイの角で作った団扇はもう破れてしまったと認識しておりますが?」
塩:「ほっほっほ! そうじゃったのう。団扇が破れてしまったのであれば、ワシにサイを返してくれないか?」
侍:「・・・・・・」
この話を聞いた雪竇和尚ら弟子たちの会話は以下の通りです。
投子:「ワシがサイを引っ張り出してやってもよいのじゃが、角がまだ固まっていないかも知れんのう・・・」
雪竇:「いやいや、むしろ固まりきっていない角が欲しいよ!」
石霜:「角なんてとっくに塩官和尚に返してしまったから、もうないよ!」
雪竇:「サイはまだちゃんといるけどね。」
資福:(指で空中に円を描き、中に「サイ」と書くしぐさ)
雪竇:「それにしても塩官和尚は何故、サイを引っ張り出すのをためらわれたのだろうね?」
保福:「歳を取り過ぎてしまったからじゃない? 誰か他の人に頼めばいいのに。」
雪竇:「やれやれ、骨折り損のくたびれ儲けか・・・」
―――――つづく
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