授業でコール&レスポンス その4

大学で教えていると、学生たちとはいろいろなやりとりがあるものです。

学生:先生は、何者なんですか?
僕 :ん?
学生:先生は、先生なんですか?
僕 :君はどう思う?
学生:分かりません。謎なので訊いてみたいと思って。
僕 :いい質問だ。僕は僕。そして、君が見たまま思ったままの奴だ。
学生:そうですか。
僕 :そうだ。

数年前、ある大学で担当した社会学概論という授業で、学生とこんなやりとりをしました。彼は、真っすぐに僕を見つめて問いかけてきました。
哲学的思考の例をいくつか挙げて、授業の最後に受講生たちなりの「定義」を述べてもらうという、いささか柔らかハードな授業をしていましたので、その延長で学生が上のような質問をしてきたのだと思います。
皆さんならどう答えますか?

ハリソン・フォード主演の「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」(2008)の中で、謎の青年マットと大学教授のインディとのやりとりに、以下のようなシーンがあります。

マット :あなたは先生なんですか?
インディ:時々ね。

考古学教授であり、冒険家であり、時に金儲けも、遊びにも精を出すやんちゃな大人として、インディはスクリーンに登場します。その、枠に縛られないところが魅力です。
僕がこのシーンを気に入っている理由は、インディの答え方です。ニヤリとしながら、“Part-time.”とだけ答えます。訳すと「時々」という意味ですが、これはなかなか意味深いひと言です。

「パート・タイムの先生」とは、日本語にすれば「非常勤講師」です。
もちろんインディは、非常勤講師ではなくいわゆる専任の教授なので、彼が言う「時々ね」とは、「先生以外にもいろいろやっているんだよ。まあ、君が見ているのは僕のごく一部さ」といったところです。
「自分の中にもまわりにも、いろんな世界があってね」という意味にもとれるインディの返答は、非常勤講師でいくつかの大学に出講している僕にとっても、背中を押されるメッセージです。

いくつものPart-timeが全体として形をなすのが、そのパート、パートを生きていく人間のアイデンティティだと考えるならば、「時々先生さ」と答えるのも一理ありということになりますね。

授業での学生からの質問やコメントには、いつも思考のヒントをもらっています。

コール&レスポンス!