番外編3「名言の嵐が吹き荒れる~心のコントロール術」

新型コロナウィルスの影響で、世の中はどこを向いてもかなり混乱した状態が続いているようです。
自分もツアーのほとんどがキャンセルになってしまい、せっかく間に合わせて作った新曲のCDの山を見つめながらため息をついています。
読者のみなさんやお子さんのストレスも相当溜まっているのではないかと思いますが、ちょっとでも気晴らしの役に立てたらという気持ちでこのノートを書いています。

ウィルスよりも人間の方が怖いというメッセージをいただき(前回)、こんな状況の中で今の自分たちに必要なのは、ウィルス対策と合わせた「感情のコントロール」なのではないか、ということで、先週はみなさんからの「気持ちのコントロール術」を募集してみました。
早速いろいろなメッセージを送っていただいたのですが、正直、自分の想像を遥かに越えた濃い内容に驚きました。名言の嵐です。吹き荒れる言葉の嵐に飛ばされてしまいそうです。
全文を読んでもらいたいという気持ちもありますが、本に出来るくらいの長文になってしまうのでピックアップしていくつか紹介して行きたいと思います。


「『悲しい』と思うから悲しくなるのだ」という言葉をどこかで知ってからは一瞬でも「あ、これは嫌な気持ちになりそう」「あ、ムカつく」と思ったら頭の中を真っ白にします。「怒りの感情は6秒置くと落ち着く」とアンガートレーニングの一環で聞くので6秒ほど頭を真っ白にします。


「悲しいと思うから悲しくなる」当たり前だけれど、本当にその通りだと思います。嫌なことは考えなければいい、というシンプルな方法ですが、それがなかなか難しい。困ったことになぜか嫌なことほどじっくり考えちゃう人も多いと思いますが(自分です)、この「6秒」という数字があることでかなり実践的な方法になりますね。

アンガートレーニングという言葉が出てくるあたり、この方は自分の状態をしっかり把握していろんな方法を勉強したり試したりしているのだと思います。その努力には尊敬の念を抱きます。アンガーマネジメントの本はビジネス書のコーナーには山ほどありますが、それほど世の中が怒りという感情とその悪影響にさらされているということなのでしょう。育児にも役にたつ方法がたくさんありそうです。


それは、避ける!です。
私自身が辛いと思う所を避けて、それが自分の気持ちの安定に繋がったのです。
これ、かなり大きかったです。行きたくないところは行かなきゃいいんだって楽になりました。
子どもは「完璧な親より、機嫌が良い親が好きなんだよ」と聞いてなるほどなと思ったことがあります。


ああ、もう泣けてきます。名言の嵐が吹き荒れています。「完璧な親より、機嫌がいい親」もはや世界の中心で叫んで欲しいレベルです。

自分が行きたくないところには極力行かないという選択。それはとても勇気がいることです。世の中には「〜せねばならない」「もっと正面から物事に向き合え」「〜するべきだ」のような考え方が溢れています。もちろん社会で生きてゆくために必要な最低限のルールは必要だと思いますが、それは親の機嫌が悪くなって子供に悪影響を与えることと引き換えにするほど大切なことなのでしょうか。
自分の場合はちょっと避け過ぎなんじゃないかという気もしますが、機嫌が悪くなるよりは余程いいと思っています。「犬も歩けば棒に当たるべきだ」「猿も木から落ちるべきだ」のような偏った考え方は例えられる動物にとっても理不尽です。(誰も言ってないけど)

「〜しなくちゃいけない」「するべきだ」は恐怖や不安の中にいるとすぐに心の隅間から忍び込んできますが、台所に出没するあいつのように全力で追い払うようにしたいと思います。「〜しなくちゃいけない」ことは、何かの結果を出すために「〜したい」と言えるようになりたいです。


何を言っても駄目な時は、お互いに駄目なので、離れるようにしてます
深呼吸をして自分に冷静なれって呟いたりしてます


離れて一度距離と時間を取るということはとても有意義なことですが、イライラしたり腹が立っていると、相手が子供でも(子供だからこそ)なかなかそれが出来ないこともあると思います。自分の場合はまだ子供から目を離せない時期ですが、年頃になったらその時間が子供にとっても自分自身で物事を考えるきっかけになるかもしれません。敢えて叱らずに、距離を持って考えることで一緒に成長出来たらいいですね。


自分は今こういう感情なんだと、それを表してくれるような言葉を見つけたりしたら日記を書いて書き留めるようにしています。


「書く」ということは気持ちのコントロールにとても役にたつ、ということはこのノートでも書きました。実際、今自分もこの文章を書きながらいろんな感情が整理されていくのを実感しています。書くということはそれだけでストレス発散になるし、感情を「文字」というものに変換しなくてはいけないので、どうしても理性的な作業が必要になってくるのです。自分の場合、あとで見返すと自分で書いたのに読めなかったりもしますが(小さくて字が下手なので)気にせずどんどん書くことにしています。


アンパンマンの名曲、しょうがないさんの歌を歌って怒りを鎮めます。
寝る前に、こどもに、○○くん、大好き!と毎日言うことを習慣にしています。


歌を歌う、そして大切な気持ちを言葉にして口に出す。これは実に素晴らしい方法です。楽しい歌を歌いながら悲しい気持ちでいることは、なかなか難しいことだからです。しかし、時には楽しく聴こえる歌の裏側に深い悲しみや絶望が包み込まれている場合もあり、そんな奥行きのある歌を歌える人を自分はアーティストと呼ぶことにしています。子守唄を歌う人は、みんなアーティストです。


「まぁ、いっかー」ととりあえず大きな声に出して言う!


「まあ、いっかー」は魔法の言葉です。最近もやもやしていてこの言葉の魔法を自分はすっかり忘れていました。思い出させてくれてありがとうございます。

これは最も簡単で、かつ最大の効果があります。どんなことが起きても、とりあえず「まあ、いっかー」と言ってみる。全くもって「全然よくない」状況でも、とにかく言ってみるのです。するとあれあれ?本当にちょっとそんな気持ちになるのです。

言葉や行動というのは人間の感情を左右する大きな要素です。本当にどうにもならない状況なのであれば、せめて自分の気持ちくらいはどうにかしたい。まさに今の自分たちの状況に近いとも言えるでしょう。

大事なのは「まあ、いい」ではなく「まあ、いっかー」であることです。「まあ、いい」だと、まあいいいんだけど本当はよくないことがありありとわかります。「まあ、いっかー」の場合はそこで終了です。それでおしまい。なおかつそこに含まれる「いいんじゃない?知らんけど」というニュアンスはその先の可能性を否定していないのです。

今の自分はツアーの日程がほぼ全てキャンセル、予想していた売り上げが限りなくゼロになり、在庫の山と未払いの請求書を眺めながら各方面とのやり取りをしなくてはいけないような状況で、子供の成長に合わせてこの先の人生の不安もすくすくと育っている最中です。今、心の中で大きな声を出して言います。「ま、いっかー!」。(全然よくないけど)


「自分は10年後からタイムスリップしてきた」「こころでナレーションをつける」の2つです。


これは実に素晴らしい、画期的な方法だと思います。このメッセージを送ってくれた方の例によると、

「うっとうしいなーー!」と思う時、10年後から来たと考えると「実際の息子たちはもう14歳と16歳…でっかくて思春期でまともに口をきくこともなく、何を考えてるのかさっぱりわからない。ああ、こんなに小さくて可愛くてお母ちゃんお母ちゃん言うてくれていたなんて!!」とどんなに疲れていても心のキャパシティがどかっと広がりイライラが落ち着きます。

ということです。実に、実に素晴らしい想像力です。ちょっとこのお母ちゃんの子供になりたいとさえ思ってしまいます。
確かに10年後には子供は確実に大きくなっていて今のように甘えてはくれないでしょうし、もしかすると盗んだバイクで走り出している可能性も否定できないわけです(たぶんない)。それを思えば全部かわいい、というのは実際そうですし、今の育児の時間を大切に出来ると思います。

そしてもう一つ、「こころでナレーションをつける」。これはすごい。すごいというか、同じようなことを考えていた人がいたのかと思うともはや感動です。


ヤベェなと感じる時「これから待ち受ける大騒動を、自分はまだ知る由もなかったのです」と心の中でナレーションを思い浮かべると、状況を客観視できるためかスンと落ち着きます。


実はこの方法、自分も窮地に立たされた時によく使っていたのです。例えば、

「秀樹は本当に参っていました。出来ることは全てやったつもりでしたが、この状況では八方塞がり、これ以上何をしてもうまくいくとは思えません。ところがこの後、事態は思わぬ方向に向かうことになるのです」

頭の中でスリリングなBGMを流して脳内ドラマを再生すると、ちょっと笑えてきます。そして自分が脚本家だったらどんな展開を書くか想像すると新しいアイデアが出てきたりもするのです(たまにだけど)。

今回の番外編ではいろんな「気持ちのコントロール術」を教えてもらいましたが、たくさんのメッセージをいただき、読者のみなさんに本当に感謝しています。自分も含め、ひとりでも多くの方の気晴らしの役に立てたらうれしいです。
メッセージを読ませていただいて感じたことは、本当にみなさん大変な思いをしながら日々をがんばって過ごしているということです。そして、それぞれが自分の気持ちのコントロールの専門家であるということがわかりました。

たとえ子供や親や旦那や妻や教師や総理大臣が束になってどんな理不尽なことをあれこれ言おうとも、確実に言えるのは、自分の心は自分のものだということです。まずはそれを大切にしていけたらと思っています。新型コロナウィルスに対抗できるような心の免疫を、一緒にアップさせていけたらうれしいです。

引き続き、メッセージもお待ちしております。

こちらまでどうぞ!<コンタクト・フォーム

(by 黒沢秀樹)

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