「子育てに、ご褒美を」黒沢秀樹の育児クリエイティブノート

このところは子どもの第一次反抗期、通称「イヤイヤ期」の真っ只中ということもあり、子どものイヤイヤとの闘いの記録が続いている。まだ何も言っていないにもかかわらず、名前を呼んだだけでとりあえず「イヤ」と言うのでもはやちょっと面白くなってきている。
しかし、この期間に子どもは自分の想像を超えて大きな成長を遂げている。
食事もいつからか幼児食へと移り変わり、今ではもうほとんど大人と同じものを同じように(量も)食べている。
「いもー」と言ってフライドポテトを食べ、うどんをほぼひと玉たいらげ、唐揚げやちくわ天などちょっと子どもにはどうかと思うものまで平気で食べている。
さらに「お名前教えて」と聞くと、自分の名前を食い気味で答えるようにもなった。
お風呂の前でズボンとオムツを自分で脱ぎ、なぜかしっかりとオムツの中身の様子を視認してから手渡すし、靴はもう少しでひとりで履けるようになりそうだ。

ついこの前まで哺乳瓶でミルクを飲み、床を這っていた子どもが自分で名前を言い、洋服を脱ぎ、ちくわ天を食べているという事実には驚愕するほかない。

このノートを読んでくれている方は育児中の人をはじめ、子どもがいる人、いない人もいるだろう。しかしもう一度思い出して欲しい、かつて自分も子どもだったことを。
誰でも最初はひとりでは何も出来なかった時期を経て今がある。そして大人になった自分たちも、まだまだ未熟で成長の可能性がある部分が残っているのだ。
自分たち大人にとって日常のあれこれをするのは当然のことだし、習慣になっているものは何も考えずとも息をするように出来る。しかし子どもにとってはそうではない。大人にとっては当たり前のことが少しずつ出来るようになることは、ほんの些細なことでも大事件なのである。
だから、何か子どもがひとつでも新しいことが出来るようになったら、どうか自分のことのように喜んで褒めてあげて欲しい。というか、自分を褒めてあげて欲しい。

子どもが生まれたらきちんと育児をするのは当たり前、と考えている人は多いと思う。しかし、育児はとても「当たり前に」出来るようなものではないことを、自分自身この2年半で心の底から実感している。そんな当たり前ではない日常を過ごしている人の中には、誰も褒めてくれない、家族とさえ話をするヒマもない、と感じている人も少なくないだろう。
だから、子どもが何か新しいことが出来るようになったら思い切り自分を褒めてあげていいと思う。なにしろ、養育者がいなければ子どもは生きていくことが出来ないし、成長することは出来ないのだ。育児をしている大人を褒めることは、子どもを褒めることと同じだし、子どもを叱ることは、大人を叱ることと同じではないだろうかと思う。

これからも日々子どもは成長し続けていくだろう。その度に、ちょっとだけ大袈裟に子どもと自分を褒めてみようと思う。

「牛乳をこぼさず飲むなんて、最高にかっこいい」

「靴下を脱いで洗濯カゴに自分で入れるなんて信じられない!」

「クリスマスはまだ言えないけど『くりーす』までは言えるのはすごい!」

「ちくわ天の衣を外してちくわだけ食べて、後から衣を食べるとか、ものすごい高等テクニック!」

なんでもいいのである。
そして自分へのご褒美を、ささやかでもいいから渡してみてはどうだろう。子どもが寝た後に、いつも我慢している大好きな食べ物をこっそりちょっとだけ食べたり、好きな音楽を聴いたり、お風呂にいい匂いの入浴剤を入れたり、そんな些細なことでいいと思う。子どもと同じように、大切なのはちゃんと褒めることである。そうすればきっと、それが自信につながっていくような気がする。
子どもを産み育てる人は、それだけで本当に素晴らしいし、奇跡的な偉業を行っているえらい人なのである。子育てをしているすべての人が、そしてどうか世界中の人たちが、そのことを忘れないで欲しいと願っている。

新型コロナウィルスの収束の気配は見えず、感染者の数は激増している。ただでさえ毎日が緊急事態である育児中の方の抱えるストレスはどれほどのものかと考える。
どうかみなさんの心と体の、安全と安心がありますように。そして自分の音楽やこのノートが少しでも息抜きになってもらえたらと思う。

しばらく書いていなかった読者の方々からのメッセージへの返信もしようと思うので、送ってもらえたらうれしいです。どうぞよろしくお願いします。

(by 黒沢秀樹)

※編集部より:全部のおたよりを黒沢秀樹さんが読んでいらっしゃいます。連載のご感想、黒沢さんへの応援メッセージなど何でもお寄せください。<コメントフォーム
ホテル暴風雨は世界初のホテル型ウェブマガジンです。小説・エッセイ・漫画・映画評などたくさんの連載があります。ぜひ一度ご覧ください。<連載のご案内> <公式 Twitter>

スポンサーリンク

フォローする