子どものおもちゃ今昔

先週は家の中での子どもとの遊び方について読者のみなさんからたくさんのメッセージをいただいたが、成長するにしたがって養育者を悩ませるもののひとつ、それは子どものおもちゃである。

まだ歩けない乳児の頃はメリー(ベッドサイドに置くおもちゃ)をゆらゆらさせたり、カランコロンと音のなるおもちゃなどに興味を示すことでとりあえず遊んでいるということにしていたが、自分の足で移動出来るようになると行動範囲も格段に増え、そのぶんおもちゃのバリエーションも増えてくる。

大きなデパートのキッズコーナーなどに行けばわかるが、現在は様々な子ども向けのおもちゃが展開されており、一大マーケットとなっていることは間違いないだろう。いわゆる知育グッズなどもたくさんあり、何をいつ、どのタイミングで買ったら良いのかも悩みどころだ。ブロック、積木、ぬりえ、パズル、ミニカーや電車、ぬいぐるみなどが代表的なものだが、たくさんのものから何を選んだら良いのかを考えるのもなかなか難しい。

しかし、多くの養育者が一度は思うであろう、出来たら家にいて欲しくないキャラクターグッズの数々がある。
自分の場合、その二大巨頭がアンパンマンと機関車トーマスだった。別にアンパンマンが嫌いなわけでもないし、トーマスにはもはや親近感と感謝の気持ちさえ持っている。しかし、家に入れたくない理由があるのだ。
それは自分のようなものを書いたり音楽を作るような仕事をしている場合、何かしら新しい作品につながるものを考えるということは、しばし生活や日常からちょっと視点をずらすところから始まることが多い。
そう考えると振り向いたらそこにアンパンマンがいる、という状況はあまり好ましいとは言えない。特に音楽というのは映像との相性が非常に良いので、アンパンマンを見るともうその瞬間に頭の中にかの名曲「アンパンマンのマーチ」が鳴り始めてしまうという困った状態になるのだ。
しかし、アンパンマンや機関車トーマスは子どものいる家庭にとってもはや生活インフラのひとつと言っても良いほど普及しており、どんなに小さな隙間からでも侵入してくる。そしてその侵入経路の多くは親族や知人友人からのプレゼントであり、子どものためを思ってわざわざ買ってくれたプレゼントをそんな理由で断るわけにもいかないのである。
もはや誰も知らない遠い国にでも移住しない限り、アンパンマンやトーマスの侵入を防ぐことは不可能に近いのだ。

こうして決壊した堤防から流れ込んだキャラクターのおもちゃは増殖を続け、最終的に養育者自らが思わず購入してしまうようになると、いよいよおもちゃで部屋が埋め尽くされることになる。狭い都心の部屋で生活している身にとってこれは大きな問題である。そこで考えたのは、自分はどのおもちゃをメインに子どもに提供するか大まかな指針のようなものを定めることである。

自分が子どもの頃を思い出すと、みんなが大好きな戦隊ものやロボットなどにはあまり興味がなく、ミニカーの収集とレコードを聴くことが主な遊びだったように思う。
レコードを聴いていたのは従兄弟と兄の影響だが、街を走る自動車に取り憑かれていた自分は当然ミニカーが好きで、最終的にはかなりの数のミニカーがあったのではないかと思われる。
調べてみると日本のミニカーの代表的なブランドであるトミカが生まれたのは1970年8月18日であり、なんと自分の生まれた年と同じであることがわかった。こうなってくると俄然トーマスやアンパンマンよりも親近感が湧いてくるのは当然で、ついデパートのミニカーコーナーに立ち寄って子どもに買ってしまいそうになるわけだが、これが結構楽しかったりするのである。

買いやすい価格設定、子どもが多少乱暴に扱っても壊れない頑丈な作り、そして働く車や緊急車両などのラインナップはまさに子どものみならず養育者の心をもクレーン車で鷲掴みにするようなもので、さらにトミカにはアンパンマンや機関車トーマスをはじめとするアニメのキャラクターとのコラボレーションシリーズまで存在しており、そのマーケティングと商品開発のきめ細やかさは見事と言うほかない。

自分が小学生の頃には空前のスーパーカーブームが起きて、ミニカーや消しゴム(という名のゴムのミニカー)なども大流行したが、それでもゴミ収集車やコンクリートミキサー車などの、ちょっとだけ生活感のある車に魅かれたのはどうしてなのだろう。
この傾向は今の子どもたちにも共通のものがあり、自分の息子も高所作業車やクレーン車などが大好きである。

時折息子は自分で何台もミニカーを並べて「じゅーたい!」と言っているが、ミニカーで自ら渋滞を引き起こす想像力はなかなかのものであり、ショベルカーやクレーン車などの可動部分を使って遊んだりしていることを考えると、知育という意味でも役に立っているような気もする。

そんなわけで、自分の息子のおもちゃ選びはしばらくはトミカのミニカーがメインになっていく気配が濃厚である。
これからも成長に合わせて子どものおもちゃのバリエーションは増えていくことになると思うが、せっかくなら大人も一緒に楽しめるものの方が良いに決まっている。次はどのミニカーを買ってあげようか、ちょっと楽しみでもある。

(by 黒沢秀樹)

※編集部より:全部のおたよりを黒沢秀樹さんが読んでいらっしゃいます。連載のご感想、黒沢さんへの応援メッセージなど何でもお寄せください。<コメントフォーム
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