トイトレ・失敗トレーニング

子どもが初めてトイレでおしっこをしてから約半年、おしっこはほぼ自己申告してトイレに行くようになり、最近になってようやくうんちができるところまでたどり着いた。
トイレに行っても出ないことも頻繁にあり、その時は「ざんねんざんねん」と他人事のように言っているが、どちらかというとそれは毎回服を脱がせてスタンバイする養育者の気持ちそのものではないかとも思う。
つい半年前までは身体の一部といってもよかった紙オムツも、日中は「お兄さんパンツ」と呼んでいる子ども用のパンツにとって代わるようになってきた。

「トイトレ」の時期は子どもによってかなり違いがあるので一概には言えないが、自分の息子の場合は始まってしまうとあっという間の出来事だった。
子どもはどうしてか「今かよっ!」というタイミングでおしっこやうんちをするので、どうしてもあたふたしたりイライラしたりしてしまうことも多いが、そこでの養育者の振る舞いが子どものトイレに対するイメージに大きく影響を与えることは間違いないだろう。
養育者の意図しないタイミングでおしっこやうんちをした場合、それが悪いことであり、うっかりしてしまうと怒られるというようなイメージが刷り込まれてしまうと、排泄行為は子どもにとって苦行のようなものになり、どんどんトイレが嫌いになってしまう。

そうなると困るのは養育者の方である。なるべく自主的にトイレに行くことを促すためには、それがとても楽しいことであるという認識をさせた方がよほどいい結果が生まれるはずだ。
実際、自分の息子にはおしっこをトイレでするたびに大げさなくらいに「すごい!かっこいい!」などと言い続け、上手にできるとすごろく方式になっているアンパンマンのシール(裏返すと表彰状になっている)や、パウ・パトロールのシール(初めて行った映画館で買った)が貼れるというご褒美までつけている。
そんなわけで息子にとってトイレはそんなに悪い場所ではなく、どちらかといえばアトラクションのひとつくらいになっているのではないかと思う。

目的を達成するためのそんな小さな積み重ねを楽しめるようになれば、子どもは新しい物事に対しても臆せずに積極的にアプローチしていくようになるのではないかと期待している。
そしてさらに大切なのは失敗した時である。お兄さんパンツにおしっこやうんちをしてしまった場合や、盛大におもらしをした時、どういう対応をするかで子どもの気持ちは大きく変わることは間違いない。
盛大におもらしをしてしまった時、子どもは大人に言われるまでもなく充分に残念な気持ちになっている。そこに追い討ちをかけてさらに叱られたり怒られたりしたらどんな気持ちになるだろうか。

世の中には思いのほか多く、失敗したことを咎められたりすると過剰に防衛的になって逆ギレしたり、中には謝れない人、というのもいる。失敗をしても自分の非を認められずに他人や環境に責任転嫁してしまう困った人たちだ。

これは「失敗してもいいし、大丈夫」だという当たり前の認識を持てないままに大人になってしまった結果ではないだろうか。今になって思うと、昔の自分にもそういうところがかなりあったような気がする。
子どもだって大人だって、毎日は小さな失敗と成功の連続である。もちろん成功する方がいいけれど、そればかりが続くことなどありえない。どちらも同じようなものである。
そんな当然のことをあらためて考えたり、子どもと一緒にゼロから「失敗トレーニング」をやり直せるのも、養育者の特権だと思っている。

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(by 黒沢秀樹)

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※編集部より:全部のおたよりを黒沢秀樹さんが読んでいらっしゃいます。連載のご感想、黒沢さんへの応援メッセージなど何でもお寄せください。<コメントフォーム
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