うちのムギをご紹介します!
うちの猫、ムギの二十歳の誕生日祝いに書きはじめた記事なのに、肝心のムギのことをちゃんと紹介していなかった(笑)。読者の皆様ごめんなさい。ムギごめんなさい。
白地に黒が入った日本猫、メスである。いわゆるハチ割れ。額の白い部分をエッフェル塔、後頭部の黒い部分を海苔と呼んでいる(おにぎりに巻いたイメージ)。
ムギは20歳だが、ぼくとのつきあいは10年だ。妻の連れ子なのである。生後1週間くらいの目もあかない子猫のときに拾われ、2ヵ月後、ご縁があって妻の元へやってきた。
ぼくがはじめて会ったとき、ムギは10歳、人間なら中年くらいだった。小さい猫という印象だった。まだまだ元気で、よく遊び、よくいたずらもした。フレンドリーな性格でぼくともすぐ仲良くなった。
高いところが好きで、高いところのものを落とすのも好きだった(笑)。
明らかにわざとやるのである。困るとわかっていてやるのである。
ムギは猫だからそんなにべたべたしてくるわけではない。自分が用のあるときだけ呼びに来る。
猫が呼ぶのはまあ「ごはん」か「あそぼう」だ。「なでていいよ」もある。
だが、こちらもいつも相手してはいられない。無視して仕事していると(ぼくは絵本作家だからうちで仕事する)、「がしゃん」と嫌な音がする。行ってみると何かが高いところから落とされている。落とされると嫌なものを選んで落とすのだ。
目の前で、こっちを見ながら前足で「落とすよ、落とすよ」みたいにすることもあった。猫はずいぶんよくわかっていると思う。なにをしたら人間が困るか、困るからすっ飛んでくるか、よく知っている。
腕や足をかんで注意をひくときもあるが、必ず皮膚が出ている部分をかむ。「だって痛いとこ噛まなきゃ意味ないにゃ?」というわけだ。やれやれ乱暴者め。
ウェブマガジンの名前にも?
4年前ウェブマガジン「ホテル暴風雨」(注:このブログはホテル暴風雨の一室です)をはじめたとき、名前の由来をたずねられると「オーナー二人の名前から1文字ずつ取りました」と答えた。
風木一人の「風」と斎藤雨梟の「雨」だ。すると「暴はなんですか?」と訊いてくる人がいる。ぼくはにんまり答えたものだ。「うちには乱暴な猫がいましてね……」
4年たってムギはすっかり物静かなネコになった。
稲妻のようだった猫パンチも今では余裕でよけられてしまう。
遊んでと言ってくることが減り、こちらから誘っても短時間で飽きるようになった。
物を落として「遊べ」と呼ぶこともなくなった。高いところにのらないのだ。
ムギ台と呼んでいる50センチほどの台があり、そこに跳びのるにもニ三度かまえなおしてから「えいっ」という感じで跳ぶ。さらに50センチほど跳んで、窓枠で日向ぼっこする。
日向ぼっこが大好き。これはずっと前から。
だいたい寝ていて、たまに起きると「ごはんにゃ~」
食べ終わったらまた眠る。
運動量が少ないのは加齢と病気と両方のせいだろう。
もう少し運動してほしいと思うけれど、無理させるわけにもいかない。
猫雑誌によく読者投稿の写真がある。「うちの子自慢」みたいなコーナーだ。かわいい写真を見ながらどうしても目が行くのが年齢だ。
つい、ムギより年上の子を探している。いると「まだ先輩がいる」と安心する。だいぶ少なくなったけれどまだたまにいる。
友人の猫が24歳まで生きたと聞けば、ムギもまだ大丈夫と思う。
20歳越えのねこは増えている。28歳の子の話も聞いた。ギネス記録はなんと38歳だそうだ。
猫の長寿の最大の敵はこれまでも書いてきたように慢性腎不全だ。
腎臓病は適切な治療をしても進行を止めるだけで健康な腎臓に戻すことはできないと言われていた。実際これまでそうだった。
しかしいま画期的な新薬が開発中だと言う。はじめての「腎臓機能を回復させる薬」らしいのだ。
次回はこれについて。
(by 風木一人)
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