自宅での皮下点滴は難しいか?~二十歳の猫ムギのブログ~

自宅で猫の皮下点滴を始めた理由

もう去年の12月のことだが、自宅皮下点滴をはじめた。
うちのムギは20歳の高齢猫で、慢性腎不全の持病がある。腎不全に起因する脱水症状を緩和するため、去年7月から動物病院で週1回、150mlの皮下点滴(皮下輸液)をしてもらってきた。
これを、獣医の先生にやり方・注意点を教えていただいて自宅で自分たちでやるようにした。
もともといずれはそうしようと思っていた。慢性腎不全による脱水はじょじょに進むのがふつうで、脱水が進めば皮下点滴による水分補給も頻度を上げなければならなくなる。
週に1回ならともかく一日おきや毎日になったら通院はかなり大変だ。

ただしこのタイミングで自宅点滴に切り替えたのは脱水症状が悪化したからではない。寒くなってきたからだ。
猫は人間と違ってコートを着るわけではない。暖房した室内から真冬の寒さの中に出かけるのはつらいだろう。歩いて10分の動物病院だが、それでも寒がりのムギにはストレスに違いない。
そこで真冬の通院を減らすために、どうせいずれ必要なのだから、いま自宅皮下点滴をはじめることにした。

自宅点滴に関しては獣医さんによって考え方が違う。素人には難しいからおすすめしないという先生もいるが、今通っている先生はそうではない。最初に相談したときから「できると思いますよ~」とのお返事だった。
ネットでも情報収集した。愛猫に自宅で点滴をしている人はけっこういることがわかった。やり方を写真や動画でていねいに説明してくれている人もいれば、長期にわたって経過を報告してくれている人もいる。ありがたいことである。同じ高齢猫をかかえた飼い主さんの話は役に立つばかりでなく心の支えにもなる。
直接の友人にも猫の自宅輸液の経験者は何人かいて、「慣れれば大丈夫」とはげましてくれた。

そんなわけで、まずは病院で先生の指導を受けながらやり、OKをもらってからいよいよ自宅でやってみた。
下の写真が病院からもらってくる自宅皮下点滴のためのセットだ。

左から

・アル綿(アルコールに浸した脱脂綿。殺菌消毒用)
・ソルラクト輸液500ml(猫の脱水対策の輸液としてよく用いられているもの。乳酸リンゲル液。これのかわりに生理食塩水を使用することもある)
・針(輸液をバッグからシリンジに移すのに使用)
・シリンジ(まだ針のついていない注射器。容量50ml)
・翼状針(シリンジから猫の皮下に注射するための針。細いチューブがついている。翼は輸液注入中に猫の身体から抜けにくくするためのもの。衛生のため1回使用ごとに使い捨て)

猫を目の前にして獣医さんに教えてもらわないと実際のところはわからないが、手順を簡単に書くと、次のようになる。

1、シリンジに針をつけ、ソルラクト輸液のバッグから50ml取る。針をつけかえてもう1本。シリンジ2本で100mlを用意する(ムギの場合の量)。
2、シリンジを電子レンジで人肌に温める(猫の身体を冷さないため)。
3、シリンジに翼状針をつける。少し押して空気を抜く。
4、猫の背中、肩甲骨のうしろあたりに注射するので、その部位をアル綿でよく消毒する(おしりに注射する方法もある)。
5、首のうしろの皮膚を3本指でつまんで上に引っぱり、先ほど消毒した部位の皮膚下に筋肉組織との隙間を作り、翼状針を刺す(うちでは常に二人でやっている。一人が猫の頭や身体を触ってなだめすかしているあいだにもう一人が針を刺す)。
6、シリンジから50mlの輸液を注入する。シリンジを取り替えてもう50mlを注入。
7、翼状針を抜いたあと、刺した部分を毛の上から30秒ほど指でつまむ。輸液が逆流してもれてこないように。

すべての行程で清潔であるよう注意する。猫に触れるものはアル綿で消毒する。人間は作業前に手指をアルコール消毒する。

皮下点滴後のムギ。左胸から脚にかけて輸液でたぷんとしている。

皮下点滴後のムギ。左胸から脚にかけて輸液でたぷんとしている。

輸液を注入した後は上の写真のように猫のからだの一部がふくらんでいるが、ムギはそれほど行動に不自由はなさそうに見える。半日もすると吸収されて目立たなくなる。吸収に24時間以上かかるようならそれは好ましくなく、吸収力が落ちているということらしい。

シリンジを使わず、輸液バッグを高所につるし、そこからの落下圧で注入するやり方もあり、ネットで見るとそちらの方が多い印象だった。
獣医の先生から「シリンジを使えば時間が短くすみ猫の負担が少ない」と聞いたのでうちではシリンジ式にした。シリンジ2本の100mlなら針を刺している時間は2分くらいですむ。
病院では一度の輸液量が150ml(シリンジ3本)だったが、先生のすすめで自宅では100ml(シリンジ2本)にした。これも早く終わる方がいいからだ。時間がかかると猫がじれて嫌がりだす恐れがある。
一回の分量が少ないぶん少し頻度を上げ、7日に一度から5日に一度にした。今のところ通院のときと効果に大きな違いはないようだ。

 

自宅皮下点滴をしてみて感じたこと

実際自宅で自分たちでやってみた感想だが、けっして簡単ではないけれど、すごく難しくもなかった。だいたい人に聞いていたとおりだった。
最初の2回、ムギはちょっと抵抗した。大暴れではないけれど中暴れくらい。3回目から急に大人しくなり、ああ、猫も人も慣れてきたなと安心したが、そのままずっととは行かず、10回を超えた今も嫌がるときとまったく嫌がらないときがあり、その違い、理由はよくわからない。

いちばんのポイントは猫の性格ではないだろうか。暴れん坊で体力のある猫だと難しいかもしれない。
次は人間が二人体制でできるかだろう。一人だと猫が動かないよう抑えながら点滴しなければならないのでだいぶ難易度が上がる。

たぶん、うまく刺せたときはほとんど痛くない。ムギが平然としている。声も出さないし動きもしない。気づいてないのかな?と思うくらいだ。
慣れたお部屋で、慣れた人間に点滴してもらうのは猫にとって安心材料でもあるだろう。

自宅輸液はうちの子に関してはそれほど困難ではなかった。とはいえ、4ヶ月先生にしてもらいながら、いつ自宅でしようかと心の準備をしてきたわけで、急にやる勇気はなかった。
そして真冬にムギを通院させるのは身体に悪いだろうという思いにも背中を押されやっと決断したのだから、心の準備はずいぶん必要だったわけだ。
猫の皮膚に針を刺すのはやはりそれだけの心理的抵抗がある。失敗して筋肉まで刺してしまったらどうしようと緊張する。コツがあるとすれば恐々やらずに思い切ってやることだろうか。緊張しすぎると手が震えるからかえって危ない。先生がやっていたように首の後ろをむぎゅっとつまんでひょいっと刺す。リラックスが大事――というのは簡単だけれど今も緊張します(笑)。

ちなみに費用は通院して先生にやってもらうよりはずっと安い。1回あたり5分の1くらい。輸液回数が増えてくると経済的負担もバカにならないからこれは助かる。
猫の慢性腎不全は長いおつきあいとなる病気で、療法食はふつうのキャットフードより高価だし、お薬代もかかるし、血液検査代もかかるから、お金の問題は避けて通れない。
同じ薬、同じ治療でも動物病院によってかかる費用は違う。それで選んだわけではないけれど、今通っているところは全体に良心的な価格だと感じている。

(by 風木一人)

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