大切な愛猫とのお別れのとき(1)

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アムロジピンをやめてもむくみは残った

前回「むくみはアムロジピンの副作用か? 貧血治療にネスプ皮下注射を試みる」の続き。

結果から言うとアムロジピンをやめてもむくみは残った。少しはマシになったがやはり手足がぷっくり、おなかがたぷっとしたままだった。おそらくアムロジピンの副作用よりも、腎機能の衰えが大きな原因だったのだ。
妻がむくんだ部分をやさしくマッサージすると、ムギはされるがままになっていた。すべて任せた感じだった。

最後の5日間は、食事量がガタっと減って、ほとんど食べなかった。ゼロではないという程度だった。
その前までは、食べないといっても時々は食べた。好きなもので、気分がよく、おなかもだいぶ減っている、そんないい条件が重なるとふと食べる気になったのではないだろうか。
食べるときは嫌々ではなく喜んで食べているようだった。しかし続かない。ちょっと食べると「もういい」となる。理由はわからなかった。おなかが膨れるような量ではない。歯周病や口内炎を疑ったこともあったが、先生に見てもらっても口の中はそんなに悪い状態ではなかった。
「もういい」となるとお皿を近づけても顔を背ける。右から出すと左を向き、左から出し直すと右を向く。それからくるりと身体ごと回っておしりを見せるようになった。食べたくないという意志ははっきりしていた。しかし食べなければ間違いなく死んでしまう。

何か食べてくれるものはないかといろんな猫のごはん・おやつを買い集めたものだ。同じ経験のある猫飼いさんはたくさんいるだろう。たしかに「これなら食べる!」ということもある。が、たいてい長くは続かない。最初の1回だけのこともある。それでも一口食べてくれたらどれだけ嬉しかったか。これで一日命が長くなるかもしれないと思った。

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ムッギンガム宮殿で

最後の日、ムギはお気に入りの場所のひとつ「ムッギンガム宮殿」にいた。

21歳の猫ムギの最後の日

ここがムッギンガム宮殿。ムギが最も愛した場所のひとつ。

ソファの下、折りたたんだ毛布の上、ごはんと水まで1メートル、トイレまで3メートルほど。
7月くらいに2階へ行かなくなってからは、一日のほとんどをここで過ごすことが多かった。たまに右に回ったり左に回ったりして姿勢を変えていた。
むくみはなかなか引かないし、4日間ろくに食べていないし、明らかに危機的な状況だったが、妻もぼくもまだ希望を持っていた。
「長くないかもしれない」とは感じていたが、「長くないかもしれない」と「今日かもしれない」は全然違う。

朝、ムギは自分でトイレに行っておしっこをした。ちゃんとした量をちゃんとトイレの中にした。それだけで少し明るい気持ちになった。むくみが引くことと食欲が出ることをただ祈った。
ムギはラプロス入りのごはん(健康缶)を何口か食べた。
お昼ご飯のあと何かムギが食べられるものはないかとスーパーのキャットフードコーナーに行った。二人で行った。まだ目を離せないほどの状態とは思っていなかったのだ。ペーストタイプのおやつ数種と猫用のミルクを買った。

午後ムギは何度かトイレに行った。あるいは行こうとした。途中で引き返すこともあった。そして足どりが頼りなくなってきた。後足がずるっと滑ってぐらぐらする。中腰であとをついて歩き、腰を支えてやった。
それ以外はずっとムッギンガム宮殿から動こうとしなかった。何度かごはんを出してみたが、拒否の度合いが強まって、うまく歩けないのに立って逃げ出そうとする。もういらない!という強い意志を感じた。
しばらく前から見られた鼻詰まりがひどくなったようで、ぷすー、ぷすーと呼吸音がした。妻がネットで取り寄せたばかりの人間の赤ちゃん用の鼻吸いを使って鼻水を取ってやった。
妻がミルクを小さなスプーンで、寝たままのムギの口のわきから入れるようにしてあげた。ぴちゃぴちゃと舌を動かしたから少しは飲んでくれたのだと思う。これがムギの最後の食事になった。

いま思えば最後の数日はもうおなかが減らなかったのだと思う。向こうの世界へ行く準備に入っていたのだ。この世の栄養はもういらない。ミルクも本当はいらなかったけれど、21年連れ添った人の最後のお願いだから飲んでくれたのではないだろうか。

(by 風木一人)

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